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連載-4- なるほどこれでなっとく!「著作権」グラフィックデザインと最新テクノロジー

スペイン知的財産事情

この原稿は、スペインと日本間の知的財産権を専門に扱う法律サービス会社であるリーガルスタジオ社の真覚久美子氏とカルロス・アバディン氏(弁護士)の著作です。

連載-4-
なるほどこれでなっとく!「著作権」グラフィックデザインと最新テクノロジー

No.251 Diciembre 2007

グラフィックデザインとは、文字を使った情報伝達方法で、文字の形・大きさ・色・並べ方などをデザインして、商品パッケージや印刷物、広告やロゴマークなどに個性を持たせ、美しく見せるものです。人間にとっては最も身近なアートであるのに芸術大学では教えない、いわゆる純粋芸術ではなく応用芸術です。
このアートについては考えたことが無い人でも、これらのデザインの効果で私たちが商品やサービス、時には政党までを選んでいることに気づかれるのではないでしょうか。
一方、コンピューター上で表現されるインタラクティブデザイン(観客との間に相互の作用や対話をもたらす新しい表現方法)、モーショングラフィック(従来のグラフィックデザインに動きや音を加えた表現方法)、ウェブデザインの中でもグラフィックデザインは欠かせません。これらのメディアは平面だった媒体をより広範囲に広げ、今日では情報伝達と美術の融合として作品の展覧会も行われています。
これらのグラフィックデザインは主に著作権法や商標権法で保護されています。あまり知られていないのは、デザイナーがクライアントによって依頼されたグラフィックデザインを、デザイン料をもらって納品しても、このデザインの著作権は原作者に引き続き既存することです。ですからきちんとした譲渡や合意を表す契約書を結ばずにこのデザインを使用・複製・改変することは違法になります。お店の名前のロゴを作ってもらい、その後も自由に広告や看板などに使えるようにするには、契約書を交わしてからにしましょう。
同じ文章でも書体を変えるだけでイメージが変わります。これらの書体もグラフィックデザインです。書体によってはコンピューターソフトに含まれていて無料で使えますが、反面ウェブ上にはデザイナーに著作権が帰属する書体もたくさんあります。「コピー」と「貼り付け」という簡単なキー操作で切り張りできる、ガードのかかっていないデータだから使って良いということではないということです。
ではこのような違法行為はどのようにコントロールできるのでしょうか?スペインのグラフィックデザイナー協会は正しい利用法を作成しこのような行為に対処しています。世界知的財産権協会も数年前からどのような規制を作るべきか議論を交わしていますが、まだ規制はできていません。このようなテーマについてはスペインの裁判所でも日々争われていますが、裁判所に提出された証拠を基に裁判官や裁判長が法に照らし合わせて解釈し判決を出しています。
先日、中国で知的財産権の仕事をしている友人から聞いた話では、2003年にトヨタが、中国の自動車メーカーがトヨタのロゴに良く似たマークを使って車を販売していることに対し商標権侵害だと訴えたところ、裁判官は「車は高い商品なので消費者は買う時には慎重に検討して買うからマークを見間違えることは無い」という判断だったそうです。日本の裁判所で争ったらまず確実に侵害していると判断されるほど似通ったマークでも中国では全く反対の判決が下りたということは、この法律の解釈の違いを表した一例になると思います。
また中国やアメリカでは、故意に他企業のロゴを商標として登録し、その会社が中国に進出しようとした時には権利をこの会社から買わないと営業できないという理不尽なことも起きているそうです。驚くべき話ですが同じようなことはスペインでも起こりかねます。なぜならスペインにおいてもまず権利を持っている人に権利があるからです。これはたとえ日本では著名なマークでも、スペインで商売をするにはまず登録する必要があるということです。