ブラジル特許庁データベース「Busca Web」の使い方とステータス確認方法
南米最大の経済大国であり、技術分野によっては知財戦略上も重要となるブラジル。
そのブラジル特許のステータス確認や権利維持状況の把握に欠かせないのが、ブラジル特許庁(INPI:Instituto Nacional da Propriedade Industrial)のデータベース「Busca Web」です。
しかし、実際にシステムを開いてみると、画面はすべてポルトガル語です。さらに、検索結果や詳細画面に並ぶのは、以下のような「謎の数字(コード)」ばかりです。
- 「6.22」の後に「6.1」が来ているが、これはどういう状況なのか?
- 「220」や「224」は、何が違うのか?
- 結局、この特許は現在も「生きている」のか?
そこで本記事では、INPIデータベースの基本的な使い方から、「コードの意味」そして「その特許が現在有効かどうか」を見極めるポイントまでを、実際の検索画面や事例を交えて解説します。
なお、本記事で紹介するのは、ゲストアクセスで確認できる書誌情報・手続履歴・年金情報・公報情報の確認方法です。
具体的な審査書類(包袋書類)の取得については、本記事の対象外とします。
1. INPIデータベースの基本画面と検索手順
ブラジル特許の情報を調べるための第一歩は、INPIが提供する検索システム「Busca Web」へのアクセスです。
ここでは、アカウントを持っていなくても無料で利用できる「ゲストアクセス機能」を使った、最も基本的な検索手順を解説します。
STEP 1:検索ポータルへのアクセスと「ゲストログイン」
まずは、INPIの公式検索ポータル(Busca Web)を開きます。
・INPI公式検索ポータルURL: https://busca.inpi.gov.br/
画面を開くと、ログイン欄(ユーザー名とパスワード)が表示されますが、ブラジル特許の検索・閲覧だけであれば、必ずしもユーザー登録をする必要はありません。
画面中央にある「Continuar」のボタンをクリックします。

STEP 2:調べる対象(特許)を選択する
ゲストアクセスに成功すると、INPIが管轄する知財の一覧(メニュー画面)が表示されます。
ブラジル特許庁は、特許だけでなく、商標や意匠なども同じシステム上で管理しています。そのため、ここで正しく「特許」を選ぶ必要があります。
画面に並ぶアイコンや文字の中から、「Patente」 をクリックします。
STEP 3:検索条件を入力する
特許の検索画面(Base Patentes)に移動したら、いよいよ検索条件の入力です。
実務で最もよく使うのは、「出願番号での検索」 と 「出願人名などでの検索」 の2パターンです。
画面内の主要なポルトガル語の意味は以下の通りです。
| ポルトガル語表記 | 日本語の意味 | 入力のコツ |
| Número do Pedido | 出願番号 | 入力例:BR 10 2014 032355 4 102014032355 |
| Título | 発明の名称(タイトル) | ポルトガル語のキーワードで検索する場合に使用します。 |
| Nome do Depositante | 出願人名/権利者名 | 企業名や大学名を入力します(英名でも前方一致で検索可能)。 |
| Nome do Inventor | 発明者名 | 発明者の氏名で絞り込みたい場合に使用します。 |
入力を終えたら、画面下部にある 「Pesquisar」 ボタンをクリックします。
STEP 4:検索結果一覧から該当特許を開く
「Pesquisar」をクリックすると、条件にマッチした特許の一覧が画面下部に表示されます。
一覧には「出願番号(Pedido)」「出願日(Data)」「タイトル(Título)」などが並んでいます。
目的の特許の「出願番号」をクリックすると、その特許の「詳細画面」へと進むことができます。
2. 「詳細画面」の各項目の読み方
検索結果から対象特許を開くと、そのブラジル特許の詳細情報が表示されます。
詳細画面は、大まかに「①書誌情報」、「②Anuidades(維持年金情報)」、「③Petições(出願人側のアクション履歴)」、「④Publicações(特許庁側のアクション履歴)」という、4つのブロックで構成されています。
それぞれの項目について説明します。
① 書誌情報
画面の最上部には、その特許の番号、出願人、発明の名称などの基本データがまとまっています。
各項目には国際標準の「INIDコード(カッコ内の数字)」が付されているため、ポルトガル語が分からなくてもある程度は項目の意味を判別できます。
また、分割出願がある場合にもここに情報が掲載されます。
※分割出願がある場合の表示(一部項目を省略)
② Anuidades(維持年金情報)
書誌情報の下に記載されている項目が「Anuidades(維持年金情報)」です。
ブラジルでは、審査中の段階(出願中)であっても、出願から所定期間経過(大まかには出願から3年経過)以降は毎年「出願維持年金」を支払い続ける必要があります。
詳細画面では直近数年分の「Ordinário(通常期)」と「Extraordinário(猶予期間)」の2つの年金納付期間の情報が掲載されています。
- Ordinário(通常期間): 出願日の応当日から3か月間の通常料金で納付できる期間です。
- Extraordinário(猶予期間): 通常期間終了後の6か月間に認められる猶予期間です。この期間に納付する場合は、延滞金が上乗せされます。
なお、右上にある「Ver todas as anuidades」をクリックすると、次のような過去の納付履歴の詳細一覧が表示されます。
③ Petições(出願人側のアクション履歴)
Anuidadesの下にある項目が、「Petições(出願人側のアクション履歴)」です。
ここには、出願人がいつ特許庁に対して費用を支払ったか、または何らかの手続を行ったかという、出願人側のアクション履歴が時系列で表示されます。
Petiçõesはさらに「Serviços(手続内容)」と「Anuidade(年金納付記録)」に分かれています。
Serviços(手続内容)
出願人側の手続が時系列で表示されます。INPIでは、手続の内容が書類名ではなくコードで表示されるため、コードの意味を読み取る必要があります。
コードの説明を含めた今回の事例の詳細については、この後の項目で説明します。
なお、コードにカーソルを持っていくと、次のようにその項目の説明が表示されます。ブラウザの翻訳機能を使えば、日本語で確認できます。
Anuidade(年金納付記録)
出願人または権利者が納付した年金の一覧です。年金納付に関するコードは、支払時の出願・権利状況によって異なります。
今回の事例のコードの内容は以下の通りです。
- コード220: 出願中の維持年金を意味します。何年目であっても一律のコードとして表示されます。
- コード224: 登録後の権利維持年金のコードで、第7〜10年度の納付を意味しています。
- コード226: 同じく権利維持年金のコードで、こちらは第11〜15年度を意味しています。
今回の事例ではいずれも通常期間内の納付でしたが、猶予期間内の納付の場合には別コードとなります。
④ Publicações(特許庁からのアクション履歴)
画面の最下部にあるのが、「Publicações(特許庁からのアクション履歴)」です。
ここには、ブラジル特許庁側のアクション履歴が時系列で表示されます。
コードの説明を含めて、詳細はServiços(手続内容)と併せてこの後の項目で説明しますが、ここでは工業所有権公報(RPI)とその入手方法について説明します。
なお、Petiçõesと同様にコードにカーソルを持っていくと、その項目の説明が表示されます。
工業所有権公報(RPI:Revista da Propriedade Industrial)は、ブラジル特許庁が発行する公報で、特許庁側の通知や処分の内容が掲載されています。
日付の左側の番号が、RPIの発行号数となります。
RPIの確認手順
RPIは無料で入手可能ですので、内容を確認したい場合には以下の手順でダウンロードしてください。・RPIダウンロードページへアクセス:
https://revistas.inpi.gov.br/rpi/
・対象公報の検索:
ページが表示されたら、一覧の「Buscar Patentes(特許検索)」をクリックします。
すると、一覧の下にさらに入力項目が表示されますので、「por número」を選択し、RPI番号を入力して「Buscar」ボタンを押します。
今回は2021/10/05に発行された「RPI2648」を入手します。
・RPI公報のダウンロード:
検索結果が表示されますので、PDFのリンクをクリックして公報をダウンロードします。
・RPI公報の確認:
RPI公報は毎号かなりのページ数(RPI2648は1586ページ)になりますので、PDFの検索機能を使って出願番号で検索してみてください。
なお、RPI2648に記載されたアクション内容は下記の通りです。
3. 審査経過情報の読み方(手続詳細)
ここまで、詳細画面の各項目について説明してきました。ここからは、出願人と特許庁のやり取りの履歴、すなわち審査経過情報の読み方を紹介します。
改めて、今回の事例の出願人と特許庁のそれぞれの履歴を確認してみましょう。
・ブラジル特許(BR 10 2014 032355 4)のINPIでの審査経過(抜粋)
INPIのウェブサイト上では、出願人側のアクションと特許庁側のアクションが別々のセクションに分かれて表示されています。そのため、そのままでは全体の流れをやや把握しにくい構造になっています。
そこで、出願人側のPetiçõesと特許庁側のPublicaçõesを、コードの意味を踏まえて時系列に整理すると、審査経過の全体像がかなり理解しやすくなります。
今回紹介するのは一例ですが、コードの意味を理解すれば、他のブラジル特許出願についても、同じように審査経過を読み取ることができます。
・ブラジル特許(BR 10 2014 032355 4)審査経過一覧表
・出願人の手続に関するコード表(ポルトガル語) https://www.legisweb.com.br/legislacao/?id=477907&utm_source=chatgpt.com
・INPI通知コード表(英語) https://www.simoes-ip.com/en/table-of-notice-codes-inpi/
4. 現在のステータス(生死情報)の確認方法
最後に、その特許が現在も有効に存続しているのか、あるいは失効しているのかという「生死情報」の確認方法について解説します。
INPIでは、日本の特許情報プラットフォームのように、「存続」「消滅」といったステータスが1語で大きく表示されるわけではありません。基本的には各履歴の最新のコードを確認し、その出願または特許が現在どのような状態にあるのかを判断する必要があります。
ここでは代表的なコードをいくつか紹介しますが、その他の事例については前述したコード表で確認をお願いします。なお、今回の事例では「権利存続中(生存)」となります。
① 現在も有効に存続している「生存」のケース
出願中、または権利が維持されていると考えられる状態です。(※事後的に状態が変わる可能性があるため、正式な確認が必要です)
- コード 16.1 特許権の付与 判断:特許として認められ、正式に権利がスタートした状態です。
- コード 224、226、228 などの年金納付記録 判断:毎年発生する年金が期日通りに支払われ、権利が正常に維持されている状態です。ただし、その後に失効・満了等のコードが出ていないかも確認が必要です。
- コード 207(出願人応答)やコード203(審査請求)など出願人側が期限内に手続きを完了した記録 判断:審査中において、拒絶理由や指令に対して出願人が応答し審査が継続している状態です。
② 権利や出願が完全に失効した「死亡」のケース
ブラジル特許で「失効」や「手続終了」を意味するコードはいくつか種類があり、失効した原因(年金未納か、応答未提出かなど)によってコードが異なります。
- コード9.2.4: 拒絶査定確定
- コード10.1: 特許出願の取下げ(撤回)の承認通知
- コード11.1.1: 審査請求未請求や拒絶理由通知への応答などについて期限内に手続きが行われなかったことによる、最終的な出願却下通知
- コード21.1: 権利期間満了
おわりに
本記事では、ブラジル特許庁のデータベース「Busca Web」における基本的な検索方法、詳細画面の読み方、手続・通知コードの意味、そして生死情報を見極める方法について、実際の審査経過をもとに解説しました。
一見すると複雑で難解に思えるブラジル特許庁のコード体系ですが、主要なコードの役割を理解すれば、審査経過や権利維持状況を読み解くことは可能です。
ブラジル特許のステータス確認が必要になった際には、ぜひINPIのBusca Webを活用してみてください。
なお、外国特許のステータス監視作業(ウォッチング)が面倒な場合は、アイアールが代わりに低コストで対応することも可能です。お気軽にご相談ください。
※詳細は「他社特許のウォッチング(監視)サービス」のページをご参照ください。
(日本アイアール株式会社 管理部 H・M)
