エクセルギー解析の基礎から応用まで
実践的なエクセルギーの計算及び解析方法
講座概要
エクセルギーとは「着目するシステムが環境と熱的に平衡状態になるまでにできる最大仕事」です。
保存則で規定されるエネルギーとは対照的に、エントロピーが生成される全ての実世界のプロセスにおいてエクセルギーは消費されます。したがって、エクセルギーによりエネルギーの質の違いを含めた評価が可能です。エクセルギーを用いて評価すると個々の要素プロセスごとに損失を計算でき、その結果をもとに、廃熱や廃物の有効利用のあり方・製造効率や製造手法の改善についての指針を得ることができます。
また、エクセルギーは物質とエネルギーに共通した資源性を示しており、資源から廃棄に至る広い時間的空間的スケールの中で物質やエネルギーの資源性の消失を定量化することができます。
二酸化炭素削減を含め省エネ・環境問題が重要な課題となっている現代において、エクセルギー解析はプロセスシステムの設計ツールとして有力な手段であると考えます。
本講義では、省エネシステムの開発に向けてエクセルギーの有効利用に役立てていただくことを狙いとして、エクセルギーの意味や活用、様々なエクセルギーの計算、システムへの応用など、例題・演習問題を交えわかりやすく説明します。
期待される効果
- エクセルギーの意味が理解できる
- 様々な物質やエネルギー、システムのエクセルギーの計算・解析方法を習得できる
主な受講対象者
- プロセスシステムの設計、省エネシステムの開発従事者、LCA研究者など
特段の予備知識は不要です。
- プロセスシステムの設計、省エネシステムの開発従事者、LCA研究者など
セミナープログラム(予定)
1.エクセルギーの概念的理解
1.1 エネルギーとエクセルギー
・エネルギーは減るのか,減らないのか
1.2 エントロピーが包括するエネルギー
・拡散とエネルギー
・混ざり合うとエントロピーは増大する(混合エントロピー)
1.3 エントロピーからエクセルギーへ
・熱エントロピー
・カルノーサイクルでわかること
・環境を基準とすることの意義
・エクセルギーでわかる事,わからない事
・エクセルギー観点での社会システムの捉え方2.エクセルギーの実践的計算方法
2.1 熱エクセルギーの計算
・伝熱に伴うエクセルギー消費
・相変態(潜熱)のエクセルギー計算
2.2 物質のもつエクセルギー(化学エクセルギー)
2.3 参照種とは
2.4 STEP1:基本物質:酸素,二酸化炭素,窒素のエクセルギー
・混合現象,気体拡散のエクセルギー
・酸素,二酸化炭素,窒素のエクセルギー
2.5 STEP2 :単体物質のエクセルギー
2.6 STEP3 :化合物の化学エクセルギー
2.7 混合気体のエクセルギー3.システムの解析
3.1 計算のためのケース分類
3.2 ケーススタディー1:材料製造の解析
・セラミックスの製造のエクセルギー解析
・鉄の製造のエクセルギー解析
3.3 ケーススタディー2:システムの解析
・ガスタービン他
講師プロフィール
北 英紀(きた ひでき)
名古屋大学 大学院工学研究科 化学システム工学専攻
教授
- 1985年3月 東京工大 大学院修士課程修了
- 1985年4月 – 2004年3月企業勤務(大手電機メーカー、自動車メーカー、およびベンチャー企業役員)
- 2004年4月 – 2012年3月独立行政法人 産業技術総合研究所(中部センター)研究グループ長
- 2012年4月 – 現在 名古屋大学 大学院工学研究科 教授
資格:博士(工学)