記事・コラム

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中国知的財産権の現状と問題解決法 (2010年特許情報フェア講演より)

企業プレゼンテーションは開催初日の午前中、しかも会場は6階でした。この時間、この会場での集客は期待できないそうです。しかし何とか格好がつきました。足を運んでくれた方達にお礼を申し上げます。ありがとうございました。相変わらず支離滅裂で聞きにくい講演であったと思います。反省です!この企業プレゼンの内容を纏めてみました。読んでいただける方がいれば嬉しいです。

 

中国特許の現状と中国特許の対策


本日のタイトルは、このままで良いのか「中国特許出願明細書」。サブタイトルは、「良いわけが無だろう!」でも、やめられない、とまらない、カッパ海老セン状態かも・・・では、始めましょう。

私が知る限り中国特許出願明細書の酷さは、もう笑うしかないです。いい加減にせい!と怒鳴りたいところですが殆どの人が無関心です。恐らくは、惨憺たる状況は知っているはずです。しかしいまパンドラの蓋を開けるのはヤバイ!ということでしょう。なぜなら、これまでに出願した案件の多くは紙クズに等しいものです。もしこの事実がバレたなら、本当にヤバイことになります。ここは停年をするまで隠し通すしかありません。この事実が会社の上層部へ知ることになれば責任者はリストラされ退職金はお召し上げになります。

 

中国への特許出願は、新種の政府開発援助(ODA)?


中国への特許出願は新種の政府開発援助(ODA)らしいです。高い出願費用はりっぱな経済援助です。年間の出願が4万件として、1件50万の費用で、ざっと200億円以上です。その他の中間処理に掛かる費用まで入れると巨大産業です。おまけに日本企業は権利は主張せず、発明はいち早く教え、しかも図面はやたらと詳しく書きます。図面は最高の技術資料です。中国からのIPDLへのアクセスが増えるのは当然でしょう。私は、こんな新種の「ODA」が有るとは知りませんでした。もうハチャメチャです。中国人の方、「日本人は、とても良い人です」と言って、きっと嬉涙を流している筈です。「謝謝!」です。

 

では何故、中国特許明細書は酷いのか(?)それには、ちゃんとした理由があります。


第一に日本語が理解できる技術者、つまり日中の翻訳者が極めて少ないと言うことです。中国での外国語教育は小学校4年から中学校、高等学校、そして大学校の2年まで第一外国語の英語を学びます。大学校3年からは第2外国語として日本語の選択はできます。しかし、理工系大学の学生は、殆ど専門英語を選択します。例えば「英語物理」と言った専門分野の英語です。日本語が出来る中国人の多くは、外国語大学の日本語学科と言った文系出身者です。彼らは日系企業や旅行会社などに就職しています。

つまり、技術的背景を待たない文系の翻訳者が技術翻訳をしているわけです。特許明細書は「発明・技術」の説明書ですから技術背景を持つ理工系出身の技術者のほうが適任のはずです。技術背景を持つ翻訳者であれば、あの難解な日本語も勘を働かせ意訳してくれるかも知れません。でも勘で訳されても困りますが・・。しかし技術背景を持たない翻訳者に比べれば遥かに品質は高いでしょう。

最近は理工系出身の技術者が日本語を勉強して「俄か翻訳者」に成りすまして翻訳アルバイトをしている話も聞きます。中国では「日中翻訳」のギャラは、とても高いですから希望者も多いです。しかし!!あの難解意味不明の日本語明細書が理解できるとは思えません。外国人に取って日本語の勉強は、始め(導入部)はとても易しいと言います。ところが勉強すればするほど難しくなるそうです。最後は嫌になるそうです。やはり、日本で長年、実際に生活して見ないと日本語の理解は極めて困難のようです。だから日本語明細書をミスなく翻訳することは神業か奇跡としかいえません。

 

現地渉外特許事務所の現状報告


日本から中国への特許出願件数は、35000件(年)超えていると思います。日本企業が出願依頼をしている現地渉外特許事務所は大手の10数社へ集中をしています。とある現地特許事務所では1000件(月)の案件を受理しています。どう考えても、物理的に処理できる件数ではありません。日本企業は、なぜ大手特許事務所を使うのでしょう(?)。皆で渡れば怖くない、安心である、というだけの理由のようです。

つまり、いざとなれば責任転嫁の言い訳ができる(?)ように防御している、としか思えません。例えトラブルが発生しても「あの大手特許事務所へ依頼しました」「日本の大手企業さんA社、B社も依頼しています」だから安心です、と言う極めて素朴(?)な動機で現地渉外特許事務所を選んで居るように思えます。

皆さん、現地の大手特許事務所のホームページを観てくれると判ります。特許弁理士さんが200名以上、弁護士さんが50名以上と顔ぶれも豪華です。その陣容の凄さに圧倒されます。ただし!彼らの「仕事語」は中国語と英語となっています。日本語を「仕事語」にしている特許弁理士さんは数人しか居ません。嘘と思いなら、いちど確認をしてみてください。

現地特許事務所は、正直に記載しています。日本語を「仕事語」とする弁理士さんの少なさは、日本からの出願依頼をこなせる筈がありません。しかも日本語が喋れる(特許明細書が書けることと喋れるは違いますが、日本人は騙されます)特許弁理士さんは日本への営業で大変忙しいです。意味不明の日本語から中国へ翻訳をして中国特許明細書を作成する時間なんて有りません。とあるl特許弁理士さんの名前で検索してみたら明らかに処理不能の件数を代理人として処理していました。到底考えられません。それから、日本人ですら理解できない、日本語明細書に対して、現地からの質問(問い合わせ)が無いのも不思議ですネ!それすら不思議と思わない日本企業は、もっと不思議です!。

欧米からの特許出願依頼は、現地特許事務所内の翻訳技術者と弁理士さんで処理できます。一方、日本からの特許出願依頼は、事務所内で全ての案件を処理することは出来ません。多くの案件は外注化(アルバイト)せざるを得ない状態です。現地特許事務所は、この課題に取り組んで日本語翻訳技術者を事務所内で育成をしています。しかし、「とても追いつかない!」のが現状です。良心的な現地特許事務所は恐らく真剣に悩んでいる筈です。しかし現状では有効な手立ては有りません。心がけの悪い(?)特許事務所は、一体どうしているのでしょう(?)私にはわかりません。恐らくは問題ありません、どんどん依頼してください「没問題!」と言って日本企業を営業して廻っているのでしょう・・・

弁理士さんは生産性を上げて、ギャラを上げる必要があります。彼らは欧米からの出願依頼は得意の英語で仕事ができますので喜ばれます。同じ英語圏であっても各国の表現の違いが有りますが慣れてくればなんか理解できる中国語へ翻訳することができます。しかし日本企業からの案件は意味不明の日本語文章で処理不能な状態です。そこで「中国人技術者は英語なら問題無く翻訳できるだろう!と言うことで日本企業は英訳した資料を渡すことがあります。技術用語の参考資料ならともかく、英語翻訳したものから中国語翻訳を求める日本企業があります。

ところが、この英語翻訳(?)が「ジャパニッシュ」で、さっぱり判らない、の「ジャパニッシュ」を真面目に翻訳しょうと試みる(勇気ある挑戦者?)なら、例え一か月かけても意味のわかる中国語へ翻訳することは困難なことでしょう。これでは彼らの給料は上がりません。「ジャパニッシュ」は、責任感のある翻訳者や弁理士さんには大変嫌われています。無責任(?)な、翻訳者であれば意味不明の「ジャパニッシュ」は、逆に「スイスイ」と置き換え翻訳ができます。どんなに苦労して翻訳しても、どうせ意味不明ですから無駄な努力はしません。そのぶん翻訳者に取っては気が楽です。とても美味しいかも・・・・。

 

中国特許の審査状況と審査官の技術レベル


1990年代は、外国技術を導入して経済発展をさせる、という大スローガンを掲げていました。つまり外国からの特許出願については権利を与える方向であったと思います。そして当時の特許審査官は外国技術に対して理解が薄く審査も正確に行われていたかの疑問は有りました。このような背景でしたから、特許出願明細書の内容はともかく特許権を取得することは案外、易しかったようです。

2000年代に入ると、国産技術で経済発展をさせる、というスローガンヘ舵を切りました。そうなると、外国からの特許出願に対しては権利をやたらと与えないという考えがでます。特許審査官は公平かつ正確に審査することが求められます。従って中国特許庁は、審査官の育成に力を注いで来ました。その結果、中国審査官の「審査能力」は飛躍的に進歩しています。米国審査官の比では無いです(失礼)!おそらく、世界の中でも中国と日本の特許審査官は優秀でしょう。ただし日本の審査官は、真面目、熱心の余り、ちょいとノイローゼ気味になる方がいらっしゃるようですが・・。病の原因は、あの意味不明な特許出願明細書です。出願人側の罪は非常に重いと言わざるを得ないです。

話を戻しましょう。「中国特許審査官」の審査レベルは上がったのですが大きな問題が生じています。そうです!日本から出願されてきた特許出願明細書が意味不明で理解できないから審査が出来ないのです。彼らにとって日本からの特許出願明細書は、審査の妨げになる迷惑な代物となっています。実にお粗末です!最近は中国から拒絶理由書が必ず来るでしょう(?)日本から出願された特許出願明細書に対する拒絶理由は審査する以前の問題が殆どです。つまり審査をしようにも何を言っているのか、意味が判らず理解が出来ないのです。決して中国特許庁の審査基準が厳しくなったわけではありません。特許審査官が「イザ」読もうにもサッパリ読めないと言う極めて単純な理由です。

意味不明、理解不能は当たり前(?)、酷いのになると中国特許法で定められたルールすら無視しています。それはそうです!日本特許庁へ提出した特許出願明細書を、そのまま忠実に翻訳しているわけですから「無茶苦茶」な話です。本来は、ただ翻訳するだけではなく翻訳をしながら中国特許明細書を作成して行くべきす。日本特有の表現をそのまま直訳した中国語を特許審査官が理解出来れば、それは奇跡です。中国特許審査官が幾ら優秀でも日本語をリバースしながら審査してくれる訳がありません。

日本と中国の大きな違いは特許明細書に対する補正への考え方です。日本と同じように補正ができると思うと、とんでもないことになります!中国特許明細書の作成は「一発勝負」です。明快な特許出願明細書であれば、中国の特許審査官は先行技術資料を抽出して、「進歩性」「新規性」についての比較見解と質問状を出します。ところが日本企業の特許出願明細書の内容は、先にお話した通り中国特許明細書の品質は惨憺たる状態にあります。

この中国特許出願明細書の酷さがもたらす経済的損失は巨大です。まず一つ、くだらない拒絶理由処理にお金がかかります。明らかに「ムダ金」です。二つ目、出願人、現地特許事所、審査官の三者間のコミュニケーションがキチン(政治家の好きな言葉?)と出来る保証はありません。例え権利が取れたとしても多分、権利の弱い「もやし特許」になっていると思います。「もやし特許」なら日本で取り慣れていますから日本企業に取っては「没問題?」かもしれません。もやし特許なら、まだ「マシ?」かもしれません。ヒョットしたら違う権利になっている可能性だってあります。とにかく、余分な金がかかる、人手も掛かる、時間も掛かるということで、良いことは何ひとつありません。

 

では一体、誰が悪いのか!「わたし、悪くない!」です!


そうです!、日本人が読んでも理解できない意味不明、曖昧な「日本語特許明細書」が諸悪の根源です。特許出願明細書は、自分の発明を他人へ理解を求めるための「技術説明書」です。「発明仕様書」と表現した方が適切かも知れません。他人の理解を得たところで、自分の「発明権利」はこの範囲です、と主張する訳です。この権利範囲の部分だけが、各国が決めたルールがあります。それは各国が自国の特許を経営する為の決め事ですから、出願人は、このルールを守らなければなりません。

他人へ自分が発明した技術を知らしめるには(理解を求めるには)、まず文書で行います。他人の理解が得られやすい文書とは、論理的に展開され、論理的に記述された文章で構成されるべきです。論理的に表現するに適した言語は、残念ですが英語です。その対極にあるのが日本語です。だからと言って悲観する必要はありません。幸いなことに技術の説明は「文明の言葉」で説明しますので文才は一切、必要ありません。必要なのは、論理的に考えられる「論理力と明快に書ける「文章力」です。

英語と中国語(北京語)は、文章構造が同じです。と言うことは思考回路も同じと言うことです。彼らに叙情的というか描写的表現の多い日本語文章は理解できる筈がありません。日本で10年以上、生活した外国人であれば、描写的表現の多い日本語を理解することはできるかもしれませんが・・・。

我社が初めて「中国人社員」を雇用したのが今から15年前です。その「中国人社員」が言ったことが印象に残っています。曰く「私は悪い、私が悪い、の区別が出来ず困っている」とのことでした。日本人は、この区別ができますが外国人にはとても難しいようです。「私は、悪い」は、属性を表し、その人は悪い人で、生まれながらの悪人です。「私が、悪い」は、ある出来事(事件)に関して、たまたま「私が、悪い」のであって限定的です。生まれながらの極悪人ではありません。そこで、その「中国人社員」は、「が」と「は」をすっ飛ばして「私、悪くない!」と言うようにしたそうです。否定文ですと「私は悪くない」これは通じます。しかし「私が悪くない」となれば日本人でも通じません。外国人にとって日本語の何処が理解しにくいのか?こんなことをアレコレと考えて難しい日本語を見直すと面白いです。日本人は外国人に対して判り易く説明する努力が必要です。

もうひとつ例を上げましょう。「ドラム缶に水を入れる」。外国人は、この「に」の使い方が判りません。例えば「・・・により」「・・・において」とかいろいろ有ります。慣れていない翻訳者の手に掛かると「ドラム缶から水を入れる」と成りかねません。文法的には間違えではありませ。しかしが意味不明です。詰まるところ、日本人が読んでも理解が難しい文章を外国人が翻訳することは不可能です。

 

日本人は、判っていません!。「日本語の何処が外国人にとって理解が出来ないのか」


日本人は外国人の言っていること、記述していることを理解しようとする努力をします。そして、最後は醤油味をつけて日本語へ転換をして理解する、という能力があります。ですから日本人は外国人に対しても同じようなことをしてくれる筈だと、思い込んでいるようです。しかし多くの外国人は、そのような努力はしてくれません。また、その能力もありません。元々の思考展開(論理的思考)が違いますので、それは無理です。

☆ある翻訳者(日本人)から聞いた話です。とても判り易い例ですので、その資料を、お借りして紹介します。
1.日本語原文:

取り扱いが便利な部材がベルトコンベア上に適切に配置されている

2.日本語修正:

部材がベルトコンベア上に配置されている。その部材は取り扱いは容易である。その配置は適切である。

☆こんな笑える例もあります。中国特許庁からの拒絶意見書の内容です。
1.審査官の指摘:

AはBを含む、BはCを含む、なにを含んでいるのですか?(日本語の含むは、中国語では「隠含」と、なるようです)。

2.現地事務所の対応:

AはBを隠している、BはCを隠している、なにを隠しているのかハッキリさせてください!(中国では、「含む」と言うことは「隠れている状態」と同じ意味と解釈できるようです)

3.出願人の対応:

滅相もありません。私は何も隠し事はしていません。審査官へ身の潔白を証明してください!これでは、幾らやり取りをしても、お互いが意味不明で解決不能です。

とどめはこれです!。「インクジエットプリンター」の訳は(?)、「インクの噴射でブ飛ぶプリンター」、これは、間違い無く大発明です。まさか、こんなことにはならないと思いますが気をつけましょう。

 

日本人しか理解できない、恐るべき(?)「JAPANISH」


日本語順に並べた奇怪(?)奇妙(?)な一見、「英語風」な新言語「JAPANISH」は日本から生まれた最高傑作品の発明品です。あと50年もすれば「世界文化遺産」に指定されること間違い有りません。日本人以外は理解することが出来ない意味不明の「JAPANISH」は、世界で嫌われているようです。ついでに日本人の知性も疑われているようです。

欧米の特許審査官は甚だ迷惑していると聞いています。とある米国特許弁護士さん曰く、米国の特許審査官は、日本からの特許出願は審査不能で、いい加減に権利を与えているとのことです。幸いなことに日本から出願される発明は米国の国益に影響する技術では無く権利を与えても米国の産業に影響はありません。何か問題があれば裁判すれば済む、というスタンスです。米国の特許弁護士事務所も日本企業からの仕事でウハウハです。彼らに取って「JAPANISH」はお金を生む大事な資源です。

最近、米国やEPからの拒絶意見書が増えていませんか(?)。その意見書の内容の殆どが意味が通じない、理解が出来ない、明細書と請求項の辻褄が合わない、といった審査以前の問題が多いです。「最近は米国の審査が厳しくなって困っているヨ」と言っているノーテンキな人がいます。別に審査が厳しくなった、審査基準が変わった、という訳では有りません。お上の命令で特許出願明細書を真面目に読むように、と審査官は指示を受けただけです。しかし!いざ真面目に読もうとしたら意味不明で理解ができない!そこで理解ができるように書いてくださいと言っているだけです。深い理由はありません。

この影響で日本企業の担当者は、自分の仕事は増える一方で忙しいようです。しかも金も時間もスキルもありません。スキル不足を補う知恵もありません、やる気もありません。無い無い尽くしで、どうしょうも無い人が増えています。このような問題を基本的に解決するには他国の特許審査官が理解できる文章で特許出願明細書を作成することです。が、その為には、まず他国の言語へ正しく変換できる日本語を書くことです。

 

中国の「知的財産権のトラブルの現状と問題点」


まず一つは模倣品への対策です。日本企業が行う「模倣品対策」は、後手後手に廻り被害を大きくしています。その最大の原因は「模倣品対策」に対するスタートからエンド迄の「対策プログラム」が用意されていないことです。模倣品対処の全てが「場あたり的」です。

一方、欧米企業や韓国企業は「対策プログラム」を周到に幾つも用意してからスタートします。勿論、担当部署への権限も与えています。従って「模倣対策」を進めて行く上で、いかなる新しい局面(場面)を迎えても即断即決で次のステップヘGOが掛けられます。

一方、日本企業はいかがでしょう(?)場面が変わる毎にその都度、社内稟議を通して決済を得る必要があります。この決済に膨大な時間を要します。その理由は「模倣品対策プログラム」を持っていないことにあります。つまり戦略がなく何もかもが「場あたり的」で、しかも「責任を取りたくない」というサラリーマン根性が社内に蔓延しているからです。

このスピードの差が被害の大小に直結します。例えば模倣品作りの集団(会社)が数十名だと仮定しましょう。しかし半年も一年も放っておくと、「あっ」という間に2~3000名の社員を抱えた超優良企業(?)へ成長します。こうなると、もう手遅れです。その会社は、立派な(?)地場産業となり、その地方では欠かせない存在となります。その地域の雇用は増え、収める税金も半端ではありません。日本人は、中国人のパワーと発展への増殖力(?)を理解できていません。何事も問題が小さいうちに手を打つことが重要です。優秀な中国弁護士は、迅速に判断できない日本企業からの仕事(依頼)を嫌っています。例え引き受けてもモチベーションが上がらず本気で取り組んでくれる保証はありません。

二つ目は、「知的財産権紛争」への対策です。とある日本の機械メーカのケースを紹介します。この会社は中国へ進出するために中国へ特許出願をして特許権を取得しています。しかし中国で特許を取得しても役に立たなかったと言う実例です。最大のミスは自社の特許が弱かったことです。模倣品を製造している中国企業のほうが権利主張も明確にされており論理性も適切で強い特許となっています。中国特許庁は日本企業からの無効申し立てを却下しました。法廷で争うことも考えましたが、もし法定で敗訴ということになれば逆に侵害となります。となれば中国から撤退、つまり売上はゼロになります。いずれ模倣品に駆逐される日まで、これまで通りズルズルとやるしかない!つまり泣き寝入りです。法廷まで持ち込んで巨大な賠償金、5000万元の支払いを命じられた装置メーカもあります。(この事件の発端から顛末は、またの機会に)

三つ目は、中国のパテント・トロール対策です。パテント・トロールの名産地(パテント・トロールで町起し?)である米国の場合は、単なる言いがかりですから全てが金で解決できます。被害も限定的で商品の売上が落ちる心配は少ないです。「金つくり」はメジャー産業ですが「ものつくり」はマイナー産業です。しかし中国は日本と同じように「ものつくり」していますので被害の大きさは無尽蔵です。予想される被害は米国の比ではないです。とても厄介なことになります。

四つ目は、知財のグローバル化への対策です。現在、特許権に対する信頼感は大きく揺らいでします。つまり特許権を取得しても「ムダ」という特許制度への不信です。日本の知財は、排他権を重視した特許出願に偏り活用面で大きな残しています。

知財の活用とは知財が持つ、共に使い合う「共生」と、お互いが競争する「戦い」の二面性を使いこなすことだと思います。これからは商品を作って輸出するだけでなく、「知的財産権」も輸出する時代です。その為には、まず世界で通用する(理解を得る、戦える)文書、つまり強い特許出明細書(バリエーションに富んだ広くて深い)が必要です。IP戦争とは、詰まるところ言語の戦いです。日本人はクチでは必ず負けます。だからこそ文書(ドキュメント)で明確に権利の主張をするしか有りません。

五つ目は、発展途上国から生まれる新しい技術への対策です。日本は欧米からの基本技術を元に周辺技術(生産技術、応用技術、改良技術等)を開発して優れた商品を世界へ送り出してきました。小さな国のニーズは大きな国(圏)に受けいれられるという鉄則があり、その幸運に遭遇した訳です。しかし、いまや先進国の多くは成熟期、衰退期を迎え新しいニーズが生まれ難い状況です。僅かの進歩性を争う技術競争で「対投資効果」が、極めて悪化をしています。一方、発展途上国は、その地域、地域で新しいニーズがたくさん生まれています。このニーズが新しい技術を「ドンドン」生み出す源泉となっています。地球の裏側まで含めた発展途上国は、その地域で生まれた新しい技術を発明へ仕立てて特許出願を「ドンドン」しています。このことが日本の脅威になっています。日本企業は日本と先進国でのニーズに拘り、発展途上国でのニーズを掴もうとしていません(現場に足を運ばない)。此処が最大の問題です。また日本の公知の技術を、そのまま持ち込めば商売になる、こんな美味しい話は無いということで安易に進出しますが、この考えに大きな落とし穴が潜んでいます。地球は広いです。発展途上国は、地域毎にたくさんの課題(ニーズ)を抱えています。その地域から進歩性が認められる技術、つまり差別化出来る発明が生まれるのです。この続きは何時か機会があれば是非とも、議論をしたいテーマです。