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ジェネリック医薬品と特許の基礎知識を解説|パテントリンケージって何?

ジェネリック医薬品と特許

ここ数年、日本でもジェネリック医薬品がだいぶ知られるようになってその数量シェアは約80%程度まで上昇しており、普及率も欧米並みに近づいてきているようになりました。

医療費削減になるなどのメリットがあるジェネリック医薬品ですが、今回は、そのジェネリック医薬品と特許について概略をまとめてみました。

1. ジェネリック医薬品とその特徴

ジェネリック医薬品とは、承認医薬品(新薬)と有効成分が同一であって、投与経路、用法・用量、効能および効果、安全性が同等である医薬品のことをいいます。新薬の再審査期間及び物質特許等の特許期間が経過したのちに承認・販売されます。もちろん、国の基準、法律に基づいて製造・販売されております。

ジェネリック医薬品の特徴としては下記のようなことが挙げられます。

  • 開発着手から承認申請までの期間が短い。
  • 開発コストが抑えられ、先発医薬品と比べて安価である。
  • 効能や効果、安全性は、先発医薬品と同等である。
  • 飲み易くするなどの改善がされている製品もある。

2. ジェネリック医薬品の普及

ジェネリック医薬品が販売されると、より安価なジェネリック医薬品に置き換わることにより、医療費が削減されることになります。国民皆保険制度を維持するためにも、低価格なジェネリック医薬品の普及が求められています。日本の医薬品の市場はおよそ6兆円といわれており、厚生労働省は、医療費の削減を図るために、安価なジェネリックを早く普及させることを推奨しています。
なお、ここ数年の日本におけるジェネリック医薬品の数量シェアは約80%程度となっています。
通常は、ジェネリック医薬品が販売されると、より安価なジェネリック医薬品に置き換わり、新薬の売り上げは減少します(パテントクリフ)。したがって、医薬品の売上げは、特許によって大きく左右されることになります。

3.ジェネリック医薬品の申請・承認

ジェネリック医薬品は、国で定められた試験を行った後に、厚労省に申請、承認後販売されます。
ジェネリック医薬品の申請・承認される時期は、物質・用途特許の期限と再審査期間によって決まります。通常、特許権の権利期間が満了すれば、ジェネリック医薬品を販売することができますが、安全性確保の観点から再審査期間が満了前は申請は認められていません。
したがって、ジェネリック医薬品の開発は、申請・承認時期から逆算して、そのスタート時期が決められます。

 

このように医薬品には特許等があり、ジェネリック医薬品は医薬品の特許を尊重する必要があります。具体的には、ジェネリック医薬品を販売後、侵害訴訟などの問題がないようにしなければなりません。そのひとつとして、「パテントリンケージ」という制度があります。

4.パテントリンケージ

パテントリンケージとは、ジェネリック薬企業から承認申請があると、政府の医薬品規制当局が、先発医薬品にかかる製薬企業(特許権者)に対し通知を行い、特許権(物質特許・用途(効能効果)特許の両方)を侵害していないか確認することを義務付ける制度をいいます。
ジェネリック医薬品の販売承認を規制当局が判断するにあたって、先発医薬品に係る特許権の存在を考慮する、薬機法と特許制度とを連動させたものです。
日本においては、「医療用後発医薬品の薬事法上の承認審査及び薬価収載に係る医薬品特許の取扱いについて(平成21年6月5日 厚 生労働省医政局経済課長・医薬食品局審査管理課長通知)」がされており、先発医薬品の有効成分に特許が存在することによって、当該有効成分の製造そのものができない場合には、ジェネリック医薬品を承認しないこととなっています。
特許侵害訴訟の発生を避けるため、新薬の特許権が存続する期間中にはジェネリック医薬品に対して承認を与えないこととしています。

ジェネリック医薬品と特許には以上のような問題がありますが、特許問題が起こらないジェネリックが出されるようになりました。オーソライズドジェネリックといわれるもので、最近多く見売られるようになりました。

5.オーソライズドジェネリック

オーソライズドジェネリックとは、新薬メーカーが子会社等特定のジェネリックメーカーと契約(ex.特許ライセンス)して、医薬品特許の使用権を与えることにより販売される、先発医薬品と全く同じ成分のジェネリック医薬品をいいます。

オーソライズドジェネリックのメリット

  • オーソライズドジェネリックは、先発医薬品の特許が切れる前に承認され、他のジェネリックに先駆けて販売されます。通常、他のジェネリック販売開始よりおよそ半年前から、子会社等により独占的に販売され、この間にジェネリック医薬品のシェアを獲得することが可能となります。
  • 原薬や添加物、製造方法等がすべて同じことで、安心感があります。 (※他のジェネリックは製造元や添加物が異なります。)
  • その他ジェネリック医薬品の開発に必要な試験を省略できる等のメリットもあります。

 

オーソライズドジェネリック医薬品の例

先発医薬品 オーソライズドジェネリック
フェブリク錠(帝人ファーマ) フェブキソスタット錠10mg「DSEP」(第一三共エスファ)
クラリス錠200(大正製薬)
クラリス錠50小児用(大正製薬)
クラリスドライシロップ10%小児用(大正製薬)
クラリスロマイシン錠200mg「大正」(トクホン)
クラリスロマイシン錠50mg小児用「大正」(トクホン)
クラリスロマイシンドライシロップ10%小児用「大正」 (トクホン)
イグザレルト細粒分包(バイエル薬品)
イグザレルト錠(バイエル薬品)
イグザレルトOD錠(バイエル薬品)
リバーロキサバン細粒分包10mg「バイエル」(バイエル薬品販売)
リバーロキサバン錠10mg「バイエル」(バイエル薬品販売)
リバーロキサバンOD錠10mg「バイエル」(バイエル薬品販売) 等
ブロプレス錠 (武田テバ薬品) カンデサルタン錠 2mg「武田テバ」(武田テバファーマ) 等
アーチスト錠(第一三共) カルベジロール錠 1.25mg「DSEP」(第一三共エスファ) 等

その他、多数あります。

6.ジェネリック医薬品と知的財産権

上述のとおり、ジェネリック医薬品は、物質・用途特許の権利期間が満了すれば販売することができることになりますが、他の知的財産権にも抵触しないことが必要となります。例えば、次のようなものが挙げられます。

  • 特許:物質・用途特許以外にも、医薬品には種々の特許があります。例えば、製法特許、製剤特許などが代表的なものですが、その他にも、結晶形、配合剤や投与方法等々があり、申請や承認に直接影響されないものの販売すれば訴訟になる可能性がある特許には十分注意をすべきである。
  • 実用新案:特許同様注意を払う必要があり、例えば、容器の形状などに特徴がある場合が考えられ、他社の権利に抵触しないようにしなければならない。
  • 意匠:同様に、錠剤や容器の形状、デザインに特徴がある場合は回避等を要する。

 

比較的最近の話題としては、骨粗しょう症薬の週一回投与特許やエルデカルシトールの結晶形に関する特許、ピタバスタチンの製剤特許、高カロリー輸液製剤特許等で訴訟になったりしています。
また、経皮吸収製剤の特許や錠剤の形状に関する意匠権が存続している旨の警告文が出されたりしています。

その他上記の知的財産権がないとしても、不正競争防止法によって訴訟になる場合も考慮しておく必要はあり、ジェネリック医薬品を開発・上市する場合には、事前の調査は大変重要となります。

 

以上、今回はジェネリック医薬品と特許について概略をご紹介しました。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・T)