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第六章 一目でわかる発明説明書(発明仕様書)

第六章 一目でわかる発明説明書(発明仕様書)

1.発明説明書(発明提案書)をマップ化

特許明細書の記載項目の主要なものは、【特許請求の範囲】と【発明の詳細な説明】との二つです。このうち【特許請求の範囲】は権利請求書と、【発明の詳細な説明】は発明説明書と見ることができます。すると、特許明細書を書くことは、権利請求書と発明説明書とを書くことと置き換えることができます。

特許明細書 = 【特許請求の範囲】 + 【発明の詳細な説明】
     =   権利請求書   +    発明説明書

【特許請求の範囲】には、

独占権を請求する技術的範囲が記載されることになりますが、具体的には【特許請求の範囲】の【請求項】に【発明の詳細な説明】の中の【課題を解決するための手段】に記載した発明の構成が記載されます。

つまり、発明説明書を完成することで、自動的に権利請求書の内容が決定されることになるから、特許明細書を書くことの主たる内容は、発明説明書を書き上げることであると言い換えることができます。ただし、どんな発明説明書でもいいということではありません。

特許明細書案としての発明説明書(発明提案書)は、発明の本質的要素を漏れなく記載し、特許明細書の記載項目に対応する内容を漏れなく記載したものであることが必要になります。さらに、発明者と特許担当者や弁理士とのコミュニケーションを重視し、そのツールとして発明説明書(発明提案書)を使う場合には、一目でわかるように一覧表示されていることが必要になります。そこで、これらの条件を満足する発明説明書(発明提案)を、発明者が気軽に作成ができるように考えてみました。MC(マトリックス・カード)を使用して「開発成果展開マップ」を作成すれば、一覧表示された発明説明書(発明提案書)が完成するようにしました。

独占権を請求する技術的範囲が記載されることになりますが、具体的には【特許請求の範囲】の【請求項】に【発明の詳細な説明】の中の【課題を解決するための手段】に記載した発明の構成が記載されます。

つまり、発明説明書を完成することで、自動的に権利請求書の内容が決定されることになるから、特許明細書を書くことの主たる内容は、発明説明書を書き上げることであると言い換えることができます。ただし、どんな発明説明書でもいいということではありません。

特許明細書案としての発明説明書(発明提案書)は、発明の本質的要素を漏れなく記載し、特許明細書の記載項目に対応する内容を漏れなく記載したものであることが必要になります。さらに、発明者と特許担当者や弁理士とのコミュニケーションを重視し、そのツールとして発明説明書(発明提案書)を使う場合には、一目でわかるように一覧表示されていることが必要になります。そこで、これらの条件を満足する発明説明書(発明提案)を、発明者が気軽に作成ができるように考えてみました。MC(マトリックス・カード)を使用して「開発成果展開マップ」を作成すれば、一覧表示された発明説明書(発明提案書)が完成するようにしました。

2. 発明の把握をする場合の必須条件

技術開発の成果として発明が生まれるものと考えれば、「開発成果=発明」という関係が成り立ちます。そこで、開発成果を発明者が「開発成果展開マップ」にまとめることで、発明説明書(発明提案書)が完成するという構図を作ってみました。

発明を説明する以上、発明と何か、発明の本質は何かということを意識することから始まります。技術の創造という観点でいうと、発明の本質は発明の機能であり発明の作用ということになります。特許明細書の記載項目としては、重要視されていない発明の作用こそ、特定の発明の価値を決める発明の本質なのです。

それは、その発明の解決原理は何かということです。原則として、解決原理が異なれば別発明です。解決原理が他の発明の要素とどのような関係にあるかを確認すると、以下のとおりです。

1

発明の目的 解決解決

2

発明の構成 解決要素

3

発明の作用 解決原理

4

発明の効果 解決結果

発明説明書(発明提案書)としては、これら四つの要素が漏れなく記載されていることが必要になります。さらに、特許明細書の記載項目に対応する内容を漏れなく記載するためには、これら四つの要素の下位概念に当る「従来技術とその問題点」、「具体例、変形例、応用例の構成」、「具体例、変形例、応用例の作用」、「具体例、変形例、応用例の効果」も必要になります。第2図に空間配置型の「開発成果展開マップ」を示しました。

以下、この空間配置型の「開発成果展開マップ」に従って、発明説明書(発明提案書)を作成する方法を説明します。

3. 具体的な手順(皆さんも一緒に試して下さい。)

(1)発明の大きな柱は、
①発明の目的、②発明の構成、③発明の作用、④発明の効果の四つということですので、発明説明書(発明提案書)のタイトル(テーマ)である「発明の名称」を中心のカードに記載します。

Q1:とりあえず、名称を決めてください。

後で発明の実体がはっきりしたら、書き直してもかまいません。

(2)発明の目的は、
問題を解決する際に、最も重要な「なんのために」という疑問に答えることです。したがって、真ん中の一番上のカードに①発明の目的を記載します。実際には、従来の技術のカードに内容を記載した後に記載します。発明の用途も発明の目的と同じカードに記載します。

注:カードの1セル面(白紙の面)に「発明の目的」と記載します。カードの9画のマトリックスの中心のセルに「発明の目的」と記載し、以下の質問の答えとなる内容を周辺のセルに記載します。

Q2:その発明は何に関するものですか?その発明は新規なものですか?

・他の技術の改良ですか?
・装置等の全体に関するものですか?
・それとも特定の部分についてのものですか?(ここには、技術分野、利用分野を記載し、合わせてその発明の概要と用途を記載します。)

(3)①発明の目的は従来技術の問題点を解決することです。
したがって、①発明の目的を記載するカードの隣(右隣)のカードに、従来技術とその問題点について記載します。

注:カードの1セル面(白紙の面)に「従来の技術」と記載します。カードの9画のマトリックスの中心のセルに「従来の技術」と記載し、以下の質問の答えとなる内容を周辺のセルに記載します。

Q3:その発明の技術分野には、従来どのようなものがありましたか?

(ここには、その発明に最も近い従来技術(従来品)を記載します。特許公報、文献、カタログ等があったら、具体的に名称や番号等その資料を特定します。)

(4)いよいよ①発明の目的のカードに①発明の目的である解決課題を記載します。

 注:カードの9画のマトリックスの中心のセルに「発明の目的」と記載してあるカードの周辺のセルに、以下の質問の答えとなる内容を記載します。

Q4:従来の技術にはどのような欠点、問題点がありましたか?

 ・従来技術(従来品)のどの欠点をどのようにして解決しましたか?
・目的は一つですか?・複数ありますか?

(5)②発明の構成は、
目的に対する手段を示すものですから、①発明の目的のカードと対称位置に当る、真ん中の一番のカードに記載します。②発明の構成は、あくまで開発技術の有利な効果を生じる開発技術の構成を記載します。

注:カードの1セル面(白紙の面)に「発明の構成」と記載します。カードの9画のマトリックスの中心のセルに「発明の構成」と記載し、以下の質問の答えとなる内容を周辺のセルに記載します。

Q5:その開発技術の要旨は何ですか?

・目的達成の手段としてなくてはならない構成要件(部分)は何ですか?
・あるほうがよい構成要件(部分)は何ですか?
・構成要件(部分)と構成要件(部分)との結合関係はどうなっていますか?
・取り除ける構成要件(部分、結合関係)は除外します。
・一口に言ってその開発技術のポイントは何ですか?

(6)④発明の効果は、
解決結果のことであり、左側の真ん中のカードに記載します。 開発技術の有利な効果を記載します。効果には、質的な効果と量的な効果があ りますので、両方とも記載します。

注:カードの1セル面(白紙の面)に「発明の効果」と記載します。カードの9画のマトリックスの中心のセルに「発明の効果」と記載し、以下の質問の答えとなる内容を周辺のセルに記載します。

Q6:その発明が完成して便利になったことは何ですか?

 ・目的達成の度合いはどの程度ですか?

(7)③発明の作用は、
②発明の構成から生じる動き、働きであり、④発明の効果を生じる原因となるものですから、④発明の効果のカードと対称位置に当る、右側の真ん中のカードに記載します。開発技術の有利な効果がどんな作用(機能)から生じるのか、その作用(機能)を記載します。

注:カードの1セル面(白紙の面)に「発明の作用」と記載します。カードの9画のマトリックスの中心のセルに「発明の作用」と記載し、以下の質問の答えとなる内容を周辺のセルに記載します。

Q7:何のどこをどのようにして使いますか?

・何のどこがどのように動きますか?何のどこがどのように働きますか?
・開発技術の原理は何ですか?・何のどこがどうなりましたか?
・どんなことができるようになりましたか?

(8)
③発明の作用のカードに記載した内容と同じ作用(機能)を果たすことのできる他の構成・構造を考えます。②発明の構成に記載した技術と同じ解決原理による他の構成・構造を考えます。具体例、変形例、応用例等(下位概念、同位概念、 上位概念)を考え出します。最低でも3種類程度考えます。
②発明の構成と関係の深い開発技術の具体例、変形例、応用例等は②発明の構成のカードの隣(左隣)のカードに記載します。

注:カードの1セル面(白紙の面)に「実施例」と記載します。カードの9画のマトリックスの中心のセルに「実施例」と記載し、以下の質問の答えとなる内容を周辺のセルに記載します。

Q8:開発技術の代替技術は考えられないか?

・開発技術の一部を変形しても同じ作用(機能)が実現できるのではないか?
・開発技術に何かを付加したらさらに便利にならないか?
・開発技術は上位の目的から見たら一実施例に過ぎないのではないか?
・その発明の具体例を図面に従って説明するとどうなりますか?
・何のどこに何をどうしましたか?
・何のどこをどう変えましたか?
・何のどこをどうしたところが新しいですか?

(9)
開発技術の具体例、変形例、応用例等(下位概念、同位概念、上位概念)の作用は発明の実施の形態や実施例の作用として、④発明の作用(カードの隣:下隣)のカードに記載します。

注:カードの1セル面(白紙の面)に「実施例の作用」と記載します。カードの9画のマトリックスの中心のセルに「実施例の作用」と記載し、以下の質問の答えとなる内容を周辺のセルに記載します。

Q9:開発技術の代替技術は考えられないか?

・開発技術の一部を変形しても同じ作用(機能)が実現できるのではないか?
・開発技術に何かを付加したらさらに便利にならないか?
・開発技術は上位の目的から見たら一実施例に過ぎないのではないか?

(10)
④発明の効果の下位概念に当る開発技術の具体例、変形例、応用例等(下位概念、同位概念、上位概念)の効果は、④発明の効果のカードの隣(上隣)のカードに記載します。開発技術の具体例、変形例、応用例等の質的な効果と量的な効果を記載します。

注:カードの1セル面(白紙の面)に「実施例の効果」と記載します。カードの9画のマトリックスの中心のセルに「実施例の効果」と記載し、以下の質問の答えとなる内容を周辺のセルに記載します。

Q10:開発技術の具体例、変形例、応用例等が完成して便利になったことは何ですか?

・図面に描かれたものの具体的な効果、利点は何ですか?
・開発技術の具体例、変形例、応用例等により、効率、安全、耐久性、省力等どんなよいことが増えましたか?
・騒音、危険、故障、無駄等どんな都合の悪いことが減りましたか?
・趣味感、美感、意外性等の二次的効果は何ですか?

(11)
開発技術の具体例、変形例、応用例等を考えることにより、当初の発明の目的自体を変更する必要が生じることもあります。具体例、変形例、応用例等の各々の目的は勿論、それらの目的を組み合わせた新しい目的を考える必要が生じることがあります。必要なら具体例、変形例、応用例等について試作・実験をしてそれらの作用・効果を確認します。

注:カードの9画のマトリックスの中心のセルに「発明の目的」と記載してあるカードの周辺のセルに、以下の質問の答えとなる内容を記載します。

Q11:具体例、変形例、応用例等の目的・効果は何か?

・具体例、変形例、応用例等から考えられる複合目的・効果は何か?
・開発技術の上位目的は何か?
・発明の目的→発明の構成→発明の作用→発明の効果の整合性に問題はないか?

説明の都合上、一つの手順を示しましたが、MCによる「開発成果展開マップ」はどこから記載してもよいということが特徴ですので、この手順にとらわれることはありません。発明の四要素を上下左右に空間配置された位置関係を守るといったルールに従えば、その対応関係(整合性)を確認できますので、その確認さえすればどこから記載してもかまいません。

ただし、9枚すべてのカードを記載することとします。記載する内容が多い場合には、新しいカードを使って9画のマトリックスの中心のセルにテーマを記載し、その周辺のセルにその構成要素(内容)を記載します。その際、カードの裏面の1セル面に必ずテーマを記載しておくようにしてください。これで、後のカードの整理が容易になります。