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第四章 発明の説明が出来なければ特許明細書は書けない

第四章 発明の説明が出来なければ特許明細書は書けない

1.特許明細書が書けない理由

特許明細書が発明の説明書であるとすれば、発明自体が完成していなければ特許明細書が書けるわけがありません。

しかし、以外にも発明が完成していない状態で特許明細書を書き始めていることがあるものです。発明が完成しているかどうか、発明が把握できているかどうか、重要な問題です。このいずれも、MCを使った「開発成果展開マップ」を作成する中で、発明を完成するために何が足りないのか、発明を把握するためにどんなポイントを押さえればよいかが、はっきりしていきます。

そのままでは、確かに特許明細書は書けないはずの発明も、「開発成果展開マップ」を完成させることにより、発明を完成し発明のポイントを把握することができ、次第に発明の目的、発明の構成、発明の作用、発明の効果が明確になります。そして、結果として特許明細書案を完成することができるようになります。

2.従来技術の調査

発明の把握の仕方で、発明の説明書および特許明細書案の内容が変わることになります。発明の把握に当り最初に必要なことは、従来技術を決定しなければなりません。従来技術と発明とを比較することで発明の説明に説得力が生まれます。それも発明に最も近い従来技術を持ってきて、その従来技術との違いを説明します。

次に、その違いによって生じる、従来技術にはない発明のポイントは何かを説明します。

  1. 従来技術では解決されなかった課題は何か。
  2. その課題をどのような手段で解決したのか。
  3. その解決原理(作用)は何か。
  4. その結果、どのような効果が得られたか。

発明の説明書には、解決手段を記載することになりますが、その解決手段は権利を請求する部分にも記載する内容でもあります。したがって、発明の把握とは、発明の説明書としての【発明の詳細な説明】の項目だけでなく権利の請求をする【特許請求の範囲】の項目も同時に作成することと考えていただければ結構です。その意味では、解決手段を記載するには、その発明に必要な最小限の解決原理が何かを吟味した上で、その構成要件を組み合わせなければなりません。

3.強い権利を取得するために

強い権利を取得するためには、将来出てくるであろう類似技術を想定し、その類似技術であっても採用せざるを得ない構成要件のみから【特許請求の範囲】ができていることが必要です。これは、出願後に新たに考え出された類似技術に対する戦略です。強い権利を取得するためには、もう一つの観点が必要です。

出願前から存在していたが、出願時に行なった調査では発見されなかった類似技術との差別化(発明が進歩性を有すること)がなされていないといけません。そうでないと、その調査漏れの類似技術を根拠に拒絶または無効にされてしまいます。

強い権利を取得するためには、発明を多面的に把握して、あらゆる類似技術を想定することが必要になります。とはいうものの、それらの類似技術は客観的に確認できないからこそ、想定することになるので、柔軟な発想が要求されることになります。MCを使って「開発成果展開マップ」を作成する場合には、この多面的展開の手順が組み込まれていますので、その手順に従えば誰でも発明を多面的に把握することができます。その結果、それぞれ解決原理の異なる別系列の発明を、それらの上位概念の一つの発明の実施の形態や実施例として捉えられるように発明の説明書を組立てることもできます。そして、この別系列の発明を【特許請求の範囲】の各請求項として記載すれば、権利の請求部分も完成できます。