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第一章 フラクタル思考の一つである「MC法」とは

第一章 MC法とは

1.MC法は1対多の発想

MC法とは、表面が3行3列の9画のマトリックスで裏面が白紙である情報カード(以下、これをマトリックス・カードと呼ぶことにする。)を使用して、1対多(3行3列であれば、中心の1セルとその周辺を取り囲む8セルという関係が成り立ち、1対8という関係になる。)という「思考の場」で問題を解決しようとする手法を言います。

実は、このような1対多の「思考の場」は、特別めずらしいことではありません。古くは、密教の「曼陀羅絵図」の構造が1対多により仏教界が1枚の絵図に表現されていると言われています。私の知る限り(単行本レベル)でも、このような1対多の「思考の場」を利用した手法として、以下のようにたくさんのものがあります。

① 池辺陽氏と森正弘氏の「デザインスゴロク」(「超常識」、森正弘著、ダイヤモンド社、昭和52年12月1日発行)
② トニー・ブザン氏の「マインドマッピング法」(「頭脳開発99パーセントへの挑戦」)
③ 松村寧雄氏の「MY法」(「経営に生きる仏教システム」、松村寧雄著、㈱講談社、昭和55年7月25日発行)
④ 今泉浩晃氏の「マンダラート」(「マンダラ・メモロジー」、今泉浩晃著、中央美術学園出版局、昭和59年6月20日発行)
⑤ 佐伯邦男氏の「三極発想法」(「三極発想法」、佐伯邦男著、㈱日新報道、平成2年1月8日発行)
⑥ 河合正義氏の「マッピング法」(「1枚の紙から発想する技法」、河合正義著、㈱日本実業出版社、平成6年7月30日発行)
⑦ 内藤富久氏と二宮紀治氏の「N2法」(「考えをまとめる技術」、㈱中経出版、平成9年12月24日発行)
⑧ 山浦晴男氏の「コスモス法」(「自分の考えを深める技術」、山浦晴男著、PHP研究所、平成10年3月6日発行)

 このうち、「マインドマッピング法」、「マッピング法」、「コスモス法」については、思考を進める上で特定の基本図形を持たない点で共通しています。「デザインスゴロク」と「三極発想法」では、正三角形の頂点と中心の他、頂点と頂点および頂点と中心との中央の合計10個の記載スペース(円形枠)を設けた基本図形を採用しています。

2. MC法はフラクタル思考

密教の「曼陀羅絵図」の構造には、1対多の「思考の場」の他に、もう一つの構造が隠されています。それは、1対多の「思考の場」の繰り返し構造です。この構造を有するがために、部分と全体とが相似形であるという性質が生まれます。実は、この仕組みは、自然界ではフラクタル構造と呼ばれ、一つの研究分野を築くほどのテーマとなっています(「フラクタル科学入門」、三井秀樹著、㈱日本実業出版社、平成2年8月30日発行)。「MY法」、「マンダラート」、「MC法」、「N2法」については、1対多の「思考の場」とその繰り返し構造が採用されています。「MY法」、「マンダラート」、「MC法」は中心の1個とその周辺を取り囲む8個という1対8からなる正四角形を思考の際の基本図形としています。

これに対し、「N2法」は、中心の1個とその周辺の6個という1対6からなる正六角形を思考の際の基本図形としています。この思考の基本パターンとして採用されている基本図形を「フラクタル図形」と見れば、これら「MY法」、「マンダラート」、「MC法」、「N2法」を総称して、「フラクタル思考」と名づけることができます。

私は、これら1対多の「思考の場」とその繰り返し構造を利用した思考を、「フラクタル思考」と呼び、その手法を「フラクタル思考法」と呼ぶことにしました。つまり、「MC法」も「フラクタル思考法」の一つということになります。

3. なぜフラクタル思考を使うのか

世の中には、発想技法とか創造技法とか呼ばれているものは、160を超えるくらい紹介されており(「創造技法実務ハンドブック」、高橋誠編著、恩田彰監修、日本ビジネスレポート、昭和56年3月23日発行および「新商品開発技法ハンドブック」、高橋誠監修・編著、日本ビジネスレポート、昭和61年7月1日発行)、この数はどんどん増えています。これらたくさんの発想技法や創造技法がある中で、なぜ「フラクタル思考法」を使うかといえば、簡単でわかりやすいからです。

使い始めたその日から、いろいろな問題の解決に使うことができます。といって「フラクタル思考」の基本的な構造が頭でわかっても、具体的な問題を解決する段になると、戸惑ってしまうことがない訳ではありません。

今までの直線的な「この次はこれ、次はこれ、・・」といった時系列に従った思考法に馴れ過ぎた頭では、発散思考を基本とする「フラクタル思考」に違和感があるのが当然です。できれば、ハードルは低い方が跳びやすい。

そこで、私は、簡単でわかりやすい「フラクタル思考」をもっと使いやすくわかりやすくすることを考えました。その結果誕生したのが、表面が3行3列の9画のマトリックスで裏面が白紙である情報カードをゲーム感覚で操作しながら自然に「フラクタル思考法」が身につくようにした「MC法(マトリックス・カード法)」です。MC法はフラクタル思考