記事・コラム

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アジアの茶色い雲、あるいはヒマラヤの氷河

アジアの茶色い雲、あるいはヒマラヤの氷河

-今、地球の上で-

「アジアの茶色い雲(Asian brown clouds)」という言葉に、きょう初めて出合った。火力発電所からの煙、工場の排煙、農村のかまどの煙などが合わさって、南アジアからインド洋までの空を茶色に染めているのだそうだ。

この茶色雲が、温室ガスである二酸化炭素(CO2)と重なって、この地域の地球の温暖化を更に強めていると、カリフォルニア大学サンディエゴの研究所(Scripps Institution of Oceanography at the University of California- San Diego)が昨日(8月2日、07年)イギリスの科学雑誌「ネーチャー(Nature)」に発表した。

大気中のCO2とこの「茶色雲」の影響をもっとも受けているのがヒマラヤの氷河(Himalayan glaciers)であり、このままでは、50年以内に氷河はまったく消えてしまうと見積もられている。

このブログでもこれまで何度か書いてきたが、ヒマラヤの氷河は北と南に流れ出す9本の河の自然の貯水池であるから、氷河の消滅は夏季に放流するダムが無くなることを意味する。河に水が流れなければ、その水に頼って生きている10億以上の人々の生活を壊し、そこでの作物に頼っているその周りの多くの人々の「食」を脅かすことになる。

この研究分析の元になった調査は、昨年(06年)3月、インド洋のモルディブ(Maldives)で行われた。無人飛行機(unmanned aircraft)-大型の模型飛行機-を同時に何機も飛ばし、それぞれ異なる高度で編隊を組み、北から流れてくる「茶色雲」の間を飛行して空中の物質を採集したのだそうだ。

CO2だけでも厄介なのに、その上大気汚染雲(茶色雲)まで加わってしまうと、これはもう「グリコや」(お手上げという大阪ことば)という感じである。まあそういわずに、地球の崩壊を防ぐためにやれることは何でもやるしかないだろう。

(07.08.03 篠原泰正)