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気象異変、あるいはビジネスチャンス

気象異変、あるいはビジネスチャンス

先月末(07年1月)、アメリカの太陽エネルギー協会(American Solar Energy Society)が「Tackling Climate Change in the U.S.」と題する200ページものレポートを発表した。*興味のある方は同サイトにアクセスすればPDFでダウンロードできる。

副題は「Potential Carbon Emissions Reductions from Energy Efficiency and Renewable Energy by 2030」となっており、2030年までにカーボンの排出量を、現在の60から80%も削減しなければならぬ、そのためには、大掛かりなエネルギー消費の効率化と、再生可能エネルギーの一大展開が必要だと提言している。

気象異変への取り組みは、当然ながら、さまざまなビジネスチャンスを生む。今日現在、政府がボケーとしていても、明日には真剣に取り組まざるを得ないから、市場は俄然具体性を見せ始めることになろう。

このレポートで取り上げられている分野を並べてみよう:
エネルギー消費の効率化では
(1)建物(buildings):個人の住宅からオフィス、工場まで
(2)輸送(transportation):
(3)産業(industry):

発電や新たな燃料としては、以下の6分野となっている:
(1)集中型太陽発電(CSP Concentrating Solar Power)
(2)太陽光発電(フォトボルタイック PV Photovoltaics)
(3)風力発電(Wind Power)
(4)バイオマス(Biomass)
(5)バイオ燃料(Biofuels)
(6)地熱発電(Geothermal Power)

太陽エネルギー協会のレポートだから太陽利用がメインであるのは当然であるが、その他の分野の可能性についても公平に分析されている。

水力発電(Hydro Power)に関しては触れられていないのは、米国においては、可能な箇所ではすべてとっくの昔に発電所が設置済みだからだろう。

個人的趣向でいえば、私が期待している海の潮の上げ下げや流れを利用した海潮発電が無視されているのは、多分アメリカ大陸の両岸ともに干満の差も流れも強くないためだろう。

ともあれ、この協会のレポートが示す分野は、いずれもこれから大躍進する事業分野に間違いなく、ビッグチャンスである。もちろんこれ以外に農業やら水に関しても大きなチャンスがある。

1年半前から時折眺めてきたこの気象異変関連対策を、もう一度整理しながら眺めていこうと思う。商品企画屋の性(さが)は直らないようだから、地球の危機に取り組む事業を「粋な企画」としてながめていくことにする。

もちろん、この反対のところには、今日の事態に無知で、いまだに高速道路を造ったり飛行場を建設するなどの「野暮な企画」が数多くある。これらについては、気が向いたときにオチョクルことにする。

気象異変(Climate Change)とピーク・オイル(Peak Oil)はコインの裏表であり、ようやく世界は事態の深刻さに気がつき、動きはじめている。ほとんどの分野において対策の知恵と技術を日本は持っているが、現在のようにボケーとしていると全部先を越されてしまうおそれもある。技術はあっても感性が鈍く、前へ突っ込む勇気に欠けていては、果敢な欧米や特に中国に全部さらわれてしまうことにもなりかねない。

(07.02.14 篠原泰正)