記事・コラム

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回帰不能、あるいは憧れの北極航路

回帰不能、あるいは憧れの北極航路

一年間このブログを書いている間に、地球環境破壊は、当然のことながら、休みなく続いていたようで、最新のニュースを読んでいると、これはどうやら回帰不能地点を通り越してしまったか、という印象が強い。

アメリカのNASAの最新のレポートでは、この2年間の(04年と05年)夏季の北極海の海氷の溶け方が尋常ではないことが報告されている。

Two separate studies by NASA,

using different satellite monitoring technologies,

both show a great surge

in the disappearance of Arctic ice cover

in the last two years.

Independent (UK), September 15,06(以下引用同じ)

NASAによる二つの別々の研究
-異なる衛星モニタリング技術を用いた-
両方ともたいへんな進展を示している
北極圏の氷で覆われた地域の消滅において
この2年間での.

 

One,

from the Jet Propulsion Laboratory in California,

shows

that

Arctic perennial sea ice,

which normally survives the summer melt season

and remains year-round,

shrank by 14 per cent

in just 12 months between 2004 and 2005.

一つは
-カリフォルニアのジェット推進研究所の-
以下を示している:
北極圏の万年氷が
-通常は夏の溶解季にも(溶けずに)生き残り1年中凍ったままの-
14%も縮んでしまった
04年から05年の12ヶ月だけで.

1年間でトルコの面積ぐらいの氷がなくなってしまったという。
従来は、このままでは、2070年までに北極海の氷はなくなってしまうと予測されていたが、この調子で溶解が進めば、それよりも何十年も早くそうなる、ということだ。

私の生きている間に北極海航路で欧州まで旅することができるようになるかも知れぬ。
また北極熊(polar bear)は、氷がなければ生きていけないから、絶滅してしまう.本物は上野動物園でしか見ることができなくなる。

もう一つの機関、Goddard Institute for Space Studies, in New York, の所長であり著名の気象学者であるJim Hansen氏は、全世界の政府に対して、「planetary environmental catastrophe」を避けるためにラディカルなアクションを取るべきだと警告を発した.彼は言う:

“I  think

we have a very brief window of opportunity

to deal with climate change…

no longer than a decade, at the most”

長くても10年しか、気象激変に対処する時間が残されていない.

タイタニックという名前の地球丸の船上で、くだらないことをグチャグチャやっている暇はないわけだ。もっとも本家のタイタニック事件とは異なり、今回は「氷山」は溶けてなくなっている。

万年氷が溶ければ海面が姿を現し、その分太陽熱が吸収されるから、ますます暑くなる。子供でも分かる理屈だから、溶解の速度はますます加速されるだろう。もちろん、海氷が溶けても海面が上昇するわけではない。酒飲み誰でも経験して分かっているように、グラスの中のウイスキー水割り氷が溶けても、あふれ出すことはない。水面は同じ高さに保たれている。しかし、これが、陸の上の氷(land-based ice)となると、すなわち、カウンターにじかに置かれた氷が溶ければ、デスクの上は水浸しになる。

北極海の氷と同じようにガンガン溶解が進んでいるグリーンランド(Greenland)、南極大陸(Antarctica)およびヒマラヤやアンデスや欧州アルプスの氷河(mountain glacier)がこのままいけば、海面(sea levels)が上昇する。

The West Antarctic Ice Sheet

would,

if it were to collapse,

raise  sea levels aroud the world by 5m.

西南極の氷床が溶けて崩壊すれば、世界の海面は5メートル上昇するだろう.

銀座のもっとも高い中央通の海抜は3メートルだから、哀れ水の中になってしまう.かつて私が夜な夜な出没したあの飲み屋この飲み屋も水の下になる。

長生きはするものではない。

(06.9.17 篠原泰正)