記事・コラム

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海の川、あるいは黒瀬川で電気は起こせるのか

海の川、あるいは黒瀬川で電気は起こせるのか

学生の頃、紀伊半島の南端串本から小さな連絡船で対岸の大島に渡り、潮岬に立ったことがある。「ここは串本向かいは大島」と民謡に歌われているところである。岬に立つと、突端の岩礁を黒潮が音を立てて西から東へ流れていた。

その昔、紀伊国屋文左衛門がミカンを積んで、この流れに乗って江戸まで突っ走ったかと思うと、いささかの感慨もあった。あるいはこの流れの先にある八丈島からの島抜けは、この流れのために事実上不可能だったという話がなるほどと納得できた。江戸時代、この流れは黒瀬川と呼ばれて怖れられていたらしい。

英国のマリーン・カレント・タービンという名前の会社が、北アイルランドで、潮流発電のプロトタイプを設置し、来年(06年)、地域の電力網に接続するとのことだ。

A prototype device

is  to be installed

in Northern Ireland’s Strangford Louch

and

connected to the local power grid

next year.

–December 28, 2005, The Guardian–以下同じ

 

The companies

say that

while

a number of power generation installations

use wave power or tidal rise and fall,

the Strangford Louch installation

will be

the first commercial prototype

to harness the energy of underwater tidal currents.

会社の言うところによれば;
幾つかの(これまで)設置された発電装置は
波の力や潮の満ち干を
利用しているのに対して、
このストラングフォード・ロッホの設置は
潮の流れのエネルギーを取り込んだ
初めての商用プロトタイプと
なるだろう.

製品名「SeaGen」というこの装置は、ツインタービン型で、800世帯の電力を賄えるとのことで、同社の重役の話では、このプロトがうまく行けば、5年以内に最初の商用発電会社が稼動を始めることを期待しているとのことである。

英国は、古くなった原子炉(nuclear reactors)や、EUの排ガス規制(emission regulation)に合わなくなっている古い火力発電を、廃止しなければならないので、その穴埋めに躍起になっているようだ。

イギリスは緯度として、日本と比べると随分北にあり、メキシコ湾流のおかげで何とか凍えずに済んでいる。その流れが、北極海の氷が溶けると、おかしくなる危険があるとのことで、もしそうなれば冬の暖房は大変な話になる。北海油田もピークを過ぎてしまったし、リニューアル・エネルギーに大きな期待をかけざるをえない。

その点、日本は相変わらず南洋の島民風のノーテンキであるから、来るべき冬の時代への備えは、今のところ限りなくゼロに近いのではないか。アーキテクチャーを描く人も居らず、いたとしてもそれを推進する人はもちろんどこにも居なく、新聞を読んでいても、テレビを見ていても、ウエブをサーフしていても、どこにもヤバイ事実は報道されていない。

このままでは、新聞によると勝っているはずの戦争なのに、ある日突然B-29の焼夷弾の雨に晒されたあの60年前と同じことが繰り返されるのではないかと、私は心配でならない。

(06.1.11 篠原泰正)