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《中国模倣品対策》権利者側の対応方法・救済ルートを整理!

中国における模倣品:4つの救済ルート

中国における模倣品(知的財産権の侵害品)の救済ルートは、以下4つが選択肢となります。
それぞれのメリット・デメリットを考慮し、状況に応じて適切な対応を検討しましょう。

1.私的救済ルート:警告状の送付、交渉など

  • コストを抑えたい場合
  • 侵害の程度が比較的軽い場合

2.行政ルート:行政摘発

  • 侵害行為が一定の規模を有する場合
  • 侵害行為が明らかである場合
  • 調査の結果、工場・店舗に確実に侵害品の在庫があることが判明している場合

3.司法ルート:民事訴訟

  • 相手側にプレッシャーをかけて侵害行為を徹底的に中止させたい場合
  • 他のルートで望ましい効果が得られていない場合
  • 行政ルートを控えるべき理由がある場合
  • 損害賠償金を請求したい場合

4.刑事ルート:公安への告発

  • 侵害が深刻で犯罪を構成する場合
  • 事件が複雑かつ重大である場合
  • 損害賠償を要せず、相手側に強いプレッシャーをかけることを優先する場合

1.私的救済ルート「警告状の送付、交渉など」

権利者は、自社の知的財産権を侵害している模倣品を発見し、その侵害行為がそれほど重大ではないと判断した場合、侵害者に対して警告状を送付することが考えられます。
通常、警告状には、自社の権利状況に関する説明、侵害者の侵害行為に関する指摘および侵害者への要求(例えば、侵害行為の停止、在庫の処分)などを記載するのが一般的です。
権利者自ら警告状を送付することも可能ですが、実務的には、侵害者にプレッシャーをかけるため、弁護士に依頼することが多いです。

私的救済ルートのメリット

侵害者が権利者の要求に応じた場合、迅速に低コストで侵害行為を差し止められる。

私的救済ルートのデメリット

警告状には法的強制力がないため、侵害者に無視される可能性が高い、その上、真正面から対抗することにより、侵害者に警戒心を生じさせ、関連証拠を破棄・隠蔽される恐れがある。

私的救済ルートの留意点

警告状を送付する前に、関連証拠をきちんと収集・確保する。

2.行政ルート[行政摘発]

行政摘発を実施する政府機関は各地に設置された市場監督管理局です。事前調査によって、工場又は店舗内に確実に侵害品の在庫があることが判明していて、且つその侵害行為が容易に判断できる場合(例えば商標権侵害)は、侵害行為の発生地、又は模倣品の生産地の市場
監督管理局に取締りを請求することができます。

市場監督管理局が侵害者の侵害行為を認定した場合、模倣品を差押さえ、侵害者に対して処罰を下すことができます。

行政摘発においては、権利者の損害賠償請求が認められていないので、損害賠償金を求める場合は、別途民事訴訟を提起する必要があります。但し、行政摘発において入手した証拠や、行政摘発における関係書類、例えば、現場実証の記録、行政処罰決定書などは、有効且つ有力な証拠として、民事訴訟に利用することができます。

また、侵害者が行政処罰を受けても侵害行為を継続する場合、民事訴訟において、当該事実を根拠として悪意による侵害に該当する旨を主張し、懲罰的損害賠償を請求することも可能です。

行政ルートのメリット

  • 民事訴訟と比べ、費用が安い
  • 処理時間が短い
  • 証拠の証明力に対する要求がそれほど高くない

行政ルートのデメリット

  • 損害賠償を請求できない
  • 各地の市場監督管理局の能力次第で、複雑な事件は受理されないことが多い
  • 商標権侵害が多く、特許権侵害はあまり受理されない

◆主な必要書類

①代理人への委任状(公認証が必要)
②権利者の登記簿謄本(現在事項証明書等:公認証が必要)
③法定代表者の身分証明書(パスポート等)
④権利証明書(商標登録証等)
* 意匠権侵害の場合、模倣品と登録意匠との対比図が必要。
⑤請求対象、侵害事実と事由、法的根拠及び処理要求等の内容を明記した取締請求書類

3.司法ルート[民事訴訟]

権利者が侵害行為を徹底的に中止させたい、または損害賠償を請求したい場合、管轄権を有する裁判所に対して民事訴訟を提起することが考えられます。

自社に有利な訴訟の管轄地を選定する方法としては、①展示会の開催地については、模倣品の販売地として管轄地とすること。②販売店の登記地を管轄地とすることができるため、販売店を選定して、その店舗を共同被告にすることが考えられます。

司法ルートのメリット

  • 侵害行為の差止と損害賠償の要求が可能
  • 相手にとって強いプレッシャーになる
  • 行政ルートと比べ、裁判所が複雑な事件であっても対応できる

司法ルートのデメリット

  • 行政ルートと比べ、時間と費用がかかる
  • 証拠の証明力に対する要求が高い

司法ルートの留意点

《商標権を主張する場合》
権利者が過去 3 年間、実際に登録商標を使用していない場合、侵害者の侵害行為によって、損失を受けたことを証明できないため、侵害行為の停止は請求できますが、損害賠償金は受け取れません。

《専利権を主張する場合》
侵害者の抗弁手段として、権利者の専利権に対して無効審判をかけるケースが多いです。従って、事前に安定性分析を行うことをお勧めします。

◆主な必要書類

①代理人への委任状(公認証が必要)
②権利者の登記簿謄本(現在事項証明書等:公認証が必要)
③法定代表者の身分証明書(パスポート等)
④証拠資料
・A 権利保有の証拠
例えば、商標の場合、商標登録証、商標の使用・宣伝、知名度に関する証拠、専利権評価報告(実用新案と意匠の場合)等
・B 侵害行為に関する証拠
公証付きで購入したサンプル、模倣品の宣伝資料、侵害鑑定等
・C 損害賠償と合理的支出に関する証拠
侵害品の販売量、価格、利潤率などに関する書類、侵害者の侵害状況を証明できる書類、オンライン販売を行っている場合の発売時期・販売量などを証明できる書類、合理的な支出を証明できる領収書、インボイス等

4.刑事ルート「公安への告発」

悪質な知的財産権侵害は犯罪を構成します。権利者が公安へ告発することで、関係侵害事件を公安機関に調査してもらうことができます。調査の結果、刑事事件になれば、人民検察院は公訴機関として裁判所へ訴訟を起こすことにより、侵害者の刑事責任を追及できます。

刑事ルートのメリット

  • 相手にとって強力なプレッシャーになる
  • 公安側の調査力が強い
  • 権利者が調査しきれないことは公安側が調査できる可能性がある

刑事ルートのデメリット

  • 損害賠償を得ることができない
  • 損害賠償を請求したい場合、別途民事訴訟を提起することになる

中国の模倣品対策でお困りなら

ということで、この記事では中国での模倣品に対する救済ルートをご紹介しました。
アイアールは長年にわたり中国の模倣品対策・模倣品調査をサポートしております。
模倣品でお困りの企業様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。