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USPTO「Open Data Portal」を用いた米国特許ステータス・包袋書類の確認方法

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Patent Centerの本人確認義務化に伴う「Open Data Portal活用術」

米国特許商標庁(USPTO)のシステム環境は、2025年9月に大きな変化がありました。
これまで広く活用されてきた「Patent Center」において、セキュリティ強化を目的とした本人確認(Identity Verification / ID.me等)が義務化されたことに加え、年金支払情報を確認する「Maintenance Fee Storefront」も、Patent Centerと同様に本人確認が必須となっています。

アカウントを持たずに「ゲスト」として即座に詳細情報を得ることができなくなった現在、ログイン不要で調査可能な「Open Data Portal(ODP)」の活用が広がっています。

本記事では、ODPを用いたステータス確認から包袋取得、存続期間調整(PTA)の確認まで、実務に直結する操作ガイドを解説します。

1. 調査の入り口:Open Data Portalへのアクセス

まずは、USPTOが提供する公開データ専用の入り口へアクセスします。

(サイトのURL: https://data.uspto.gov/patent-file-wrapper/search

2. 検索対象の番号を入力

入力する際の番号形式は以下の通りです。

  • 出願番号:15/551,770 または 15551770
  • 公開番号:US20180037761A1(※末尾のA1まで入力)
  • 特許番号:10,919,311 または 10919311

USPTOのOpen Data Portalでの検索画面1

① 該当案件のタイトルをクリック

該当案件が表示されたら、タイトル(Title)をクリックして詳細パネルを開きます。
※出願番号と特許番号はどちらも同様の数字形式で入力できるため、別案件がヒットする場合があります。

USPTOのOpen Data Portalでの検索画面2

3. 実務で必須となる5つの確認項目

① ステータスの確認

まず「Application Data」が表示されますので、ステータスを確認します。

  • Status: 現在の案件状態(Patented, Abandoned, Final Rejection等)
  • Status Date: そのステータスが確定した日付

※年金の詳細な納付状況(どの年次まで払われたか等)はここでは確認できません。年金納付情報については、後述する「Transactions」に記載されます。

USPTOのOpen Data Portalでのステータス確認

② 分割出願・継続出願の確認(Continuity)

Continuity」をクリックすると、分割出願・継続出願に関する情報が表示されます。
分割出願や継続出願のつながりを把握する際は、ここを確認するのが基本となります。

  • Parent Continuity Data(親出願): その案件がどの出願から継続・分割されたのかが表示されます。
    「Parent Application(親出願の出願番号)」や「National Stage Entry、Divisional。Continuation等」の関係性が記載されています。
  • Child Continuity Data(子出願): その案件から派生したの継続・分割出願がリストアップされます。
    これにより、出願ファミリーの変遷や現在の権利化状況などを特定できます。

USPTOのOpen Data Portalでの分割・継続出願に関する情報1
Continuityの詳細画面
USPTOのOpen Data Portalでの分割・継続出願に関する情報2

③ 包袋書類の取得(Documents)

Documents」をクリックすると、包袋書類(File Wrapper)の一覧が表示されます。
旧PAIRで利用されていたIFW(Image File Wrapper)に相当し、出願から現在に至るまでのすべての提出書類・発行書類が格納されています。
書類の保存形式は基本的にPDF形式ですが、公報や一部の書類はXMLやWORD形式で保存可能となっており、「コピー&ペースト」や「翻訳ツールへの一括投入」が容易になります。
なお、ドキュメントリストは原則として1日1回程度で更新されるとされています。

USPTOのOpen Data Portalでの包袋書類の取得1
Documentsの詳細画面
USPTOのOpen Data Portalでの包袋書類の取得2

④ 経過情報の確認(Transactions)

Transactions」をクリックすると出願経過情報が表示されます。
出願から現在までの履歴が時系列で表示されるため、いつOAが出たか、いつインタビューが行われたかといった「審査官とのやり取りの足跡」を時系列で把握できます。
また、4年目以降の年金納付があった場合も、Transactionsに情報が記載されます。

USPTOのOpen Data Portalでの経過情報の確認1
Transactionsの詳細画面
USPTOのOpen Data Portalでの経過情報の確認2

⑤ 特許期間調整の確認(Patent Term Adjustment)

Patent Term Adjustment(PTA)」は、USPTO側の審査遅延により、通常の特許期間(出願日から20年)に遅延分が加算される制度です。ここでは、調整理由や日数の詳細が記載されています。
調整理由の簡単な説明は下記の通りです。

  • A Delays(14ヶ月ルール等): 特許庁が最初のOA(拒絶理由通知)を出すのが遅れた場合などに発生します。
  • B Delays(3年ルール):出願から登録まで3年以上かかった場合に加算されます。
    ※RCE(継続審査請求)を提出すると、その後の期間は原則としてB遅延の対象外となるため、Transactions(経過情報)と照らし合わせて確認が必要です。
  • C Delays:抵触審査(Interference)や審判、派生的な手続きによる遅延です。
  • Applicant Delay(出願人による遅延):OAに対する応答に3ヶ月を超えて延長(Extension of Time)を使用した場合など出願人による遅延があった場合、USPTO側の遅延日数から差し引かれます。

USPTOのOpen Data Portalでの特許期間調整の確認1
Patent Term Adjustmentの詳細画面
USPTOのOpen Data Portalでの特許期間調整の確認2

4. 上記以外にODPで確認できる情報

「Open Data Portal」では、すでに説明した情報のほかにも下記のような情報が確認可能です。

  1. 住所および代理人情報(Address and Attorney/Agent Information) 出願人・権利者(Assignee)の住所や代理人(Attorney/Agent)の最新情報が表示されます。
  2. 譲渡情報(Assignments) 出願人から他社へ権利が譲渡(売買やM&Aなど)された履歴や、現在の権利者(Assignee)の情報が表示されます。
  3. 優先権情報(Foreign Priority) 日本の特許庁など、米国外へ最初に出願した際の「出願番号」「出願日」「国名」が記載されています。
  4. 審判・決定情報(PTAB Decisions) 拒絶査定不服審判(ex parte appeal)や、他社からの無効申立(IPR/PGR)などの審判番号と、その最終的な「決定書(Decisions)」の内容です。
    URL: https://data.uspto.gov/ptab/trials/proceedings

※Final Petition Decisionsは2026年1月6日付で廃止されています。

本人確認が必須となった現在、ログイン不要で利用できるODPは実務上ますます重要です。
ぜひ日常業務に取り入れてご活用ください。