【中国専利ニュース】改正後の中国専利法実施細則における意匠に係る改正条文・要点
2023年12月11日に「国務院による『中華人民共和国専利法実施細則』の改正に関する決定」(国務院令第769号)が公表されました。続いて12月21日に中国国家知識産権局は「中華人民共和国専利法実施細則(2023年改正)」(以下、「新実施細則」という)を公表し、これに伴い、同日に「専利審査指南(2023)」(以下、「新審査指南」という」)、「改正後の専利法及びその実施細則の施行関連審査業務処理に関する過渡弁法」及び「特許権の存続期間補償及び特許解放式許諾に関する行政復議事項の公告」も公布しました。新実施細則及び新審査指南はいずれも2024年1月20日より施行されます。
新実施細則は、全13章149条があり、現行の実施細則を基礎として、4つの条文 を削除するとともに新たに30の条文 を追加しました。新実施細則の改正条文は専利の創造、審査、運用、保護、管理、サービス及び国際協力などに言及しました。
本文では、新実施細則の改正条文のうち、意匠に係る条文を抜粋して紹介させていただきます。
2022年に、中国は「ハーグ協定のジュネーブ改正協定」(以下、ハーグ協定という)に加盟しました。ハーグ協定に加盟する準備として、中国専利法第4回改正法に部分意匠の保護を追加し、意匠の優先権制度を完備し、意匠権の存続期間を15年に延長する改正を行いました。これに応じて、新実施細則は実務のニーズを満たすために更なる詳しい規定を明確にしました。
1、部分意匠の出願書類について
- 部分意匠出願の際には、物品全体の図面を提出するとともに破線と実線の組み合わせ又はその他の方式により意匠登録を受けようとする部分を表示しなければならない。(第30条より)
- 部分意匠出願の際には、物品全体の図面において破線と実線の組み合わせで描いた場合を除き、意匠の簡単な説明において意匠登録を受けようとする部分を明記しなければならない。(第31条より)
2、意匠の国内優先権主張について
- 国内優先権を主張する際、先願が特許出願または実用新案出願である場合、図面に表わされたデザインについて、同一の主題に係る意匠を出願することが可能である。先願が意匠出願である場合、同一の主題について意匠を出願することが可能である。
- 国内優先権を主張する際、先願は後の出願の提出日より取り下げられたものとみなす。但し、特許出願又は実用新案出願を以て国内優先権主張の基礎として意匠を出願する場合については、この限りでない。(いずれも第35条より)
3、意匠の初歩審査制度について
意匠の初歩審査において、明らかに新規性を備えていないかについて審査を行うとともに、明らかに進歩性(創作非容易性)を有していないかについても審査されることになりました。
《条文訳》
- 専利法第34条及び第40条に係る初歩審査とは、出願が専利法第26条又は第27条に規定されている書類又は他の必要書類を備えているか、その書類が規定されている書式であるか、以下の各項の規定に合致するかに関する。
(中略)
意匠出願については、明らかに専利法第5条、第25条第1(6)項で規定されている状況に属しているか、専利法第17条、第18条第1項又は本細則第11条、第19条、第30条、第31条の規定に合致していないか、明らかに専利法第2条第4項、第23条第1項、第23条第2項、第27条第2項、第31条第2項、第33条又は本細則第49条第1項の規定に合致していないか、専利法第9条に基づき意匠権を与えてはいけない状況に属しているかについて審査を行う。(第50条より)
4、遅延審査請求について
新審査指南によって、遅延審査請求を希望する場合、意匠出願と同時に提出しなければならない。遅延期間は月を単位として、最大期間は遅延審査請求の発効日より36ヶ月とする。
《条文訳》
- 出願人は、出願について遅延審査請求を提出することができる。(第56条より)
5、国際意匠出願の特別規定について
新実施細則では、「第十二章 国際意匠出願の特別規定」(第136条~144条)を新設しました。国際意匠出願の法的地位および国際出願との連携のための審査プロセスについて規定され、優先権、新規性の猶予期間、分割出願などについて国内意匠出願制度と連携している規定などを定めました。
《条文訳》
- ハーグ協定によって国際登録日が既に決定した意匠出願は、中国を指定する国際意匠出願が国務院専利行政部門に提出した意匠出願とみなされる。当該国際登録日は、専利法第28条に言及されている出願日とみなされる。(第137条より)
- 国際意匠出願の出願人が優先権を主張する場合、国際意匠出願の公開日から3ヶ月以内に優先権証明書類の謄本を提出しなければならない。(第139条より)
- 一つの国際意匠出願が二つ以上のデザインを含む場合、出願人は国際意匠出願の公開日から2ヶ月以内に国務院専利行政部門に分割出願を提出することが可能であり、分割出願する場合、関連費用を納付する必要がある。(第141条より)
(北京HLE[北京恵利爾知識産権信息諮詢有限責任公司])