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連載-21- なるほどこれでなっとく!「産業財産権」 商標権

スペイン知的財産事情

この原稿は、スペインと日本間の知的財産権を専門に扱う法律サービス会社であるリーガルスタジオ社の真覚久美子氏とカルロス・アバディン氏(弁護士)の著作です。

連載-21- なるほどこれでなっとく!「産業財産権」 商標権

No.268 Junio 2009

商標とは、TOYOTAやIBERIAのような文字商標、プレイボーイのうさぎのような図形商標、コカコーラのビンのような特徴的な商品の形状や不二家のペコちゃんのように店舗に設置される立体的な看板など立体的形状を登録できる立体商標やこれらを組み合わせたもの、またはこれらと色彩との結合マークです。またスペインでは音も商標登録できますが、日本の特許庁は来年度に向けて、「音響・匂い・味・手触り」も商標としての機能を発揮できるよう法改正を検討しています。日西間では義務ではありませんが、権利が取得された名称やロゴマークには登録商標を示す(R)やアメリカ商標規定のトレードマークを意味するTM、サービスマークを意味するSMをつけることもあります。

このような商標は製造者を明確にする、品質を保証する、そして商標をつけることがそのまま売り上げに貢献する宣伝広告の機能を持っています。したがって商標の権利を持たない第三者が同一または類似の登録商標を商品やサービスに使用することは、商標侵害になります。

例えば露天商の売る偽ブランド品。今日マフィアが武器や麻薬よりも刑罰が軽く、簡単な資金源になるということで力を入れている分野。またその裏にはこれらの商品を低賃金で人権を無視した条件で作らされる子供たちなどがいます。そして正規の商品を作る工場で働く人たちの仕事をなくすことや、オリジナル商品の信用を失うことにもつながり、多くの社会問題を生み出しています。ちなみにこのような商品をスペインで買って、日本に持ち込もうとして摘発されると、このコピー商品は没収され、関税法の規定(5年以下の徴収もしくは、500万円以下の罰金)により厳しく罰せられることになります。また偽ブランド品をネットオークションやフリーマーケットなどで販売しようとしても同様に罰せられるほか、民事事件で損害賠償請求を受ける恐れもあります。一方スペインではこのような場合、6か月から2年以下の懲役と、6か月から24か月相当の罰金の両方が科せられます。安くて魅力的なこのような商品は今日とても安易に手に入れることができますが、自分で使うために買ったとしても、背景にはこんなにいろいろな問題があるということをお忘れなく。

商標登録も他の知的財産同様、国内・欧州・国際商標がありそれぞれの法律によって保護されていますが、最近は規則を国際的に統一し、世界的に知的財産侵害物品の取り締まりを強化しようとしています。また大企業や様々な協会や管理団体も取り締まりに余念がありません。

中小企業が会社を起こし、サービスを提供する名称も決めてカタログや名刺などの印刷物を作ったり、広告を打ったり、ドメインも確保しウェブも作って順調な滑り出しをしたと思ったのもつかの間、この名称がある大手企業の登録商標に類似していると訴えられ、この大手企業の知名度のお陰でこの中小企業が顧客を獲得したということで、裁判で負けるケースがありました。この企業はせっかくいろいろと投資した名称を変更せざるを得なくなったばかりでなく、新たにまたすべてを作り直すという余計な出費をしなくてはなりませんでした。このケースで学ぶべきことは、独自のサービスや商品を提供する場合、またその名称を企業名にする場合、事前に知的財産権の専門家に調査を依頼し、問題なければ出願してから会社の登記やその他の作業を始めるべきということです。

商標登録は日本とスペインの場合ニース協会に加盟していますので、この協定に従って、第1類から第34類までが商品、第35類から第45類までがサービスの区分になっています。例えば、「バッグ」は第16類、「レストラン」は第43類になります。商標出願には分類毎に費用がかかりますが、急がば回れ。まずは出願されることをお勧めします。