パテントマップは技術者のもの
企業では従来から、知的財産部が特許情報を収集したりウォッチングして社内の研究開発や営業部門に配布するパターンが普通であった。したがって研究・開 発に携わる人達は、どちらかと言うと受動的な特許情報の活用に終始していた。これではいけないと、自分たちで情報を集め整理する状況になってきた。一方で は最近の技術の多様化と総合化により、必要とする情報が複雑多様化して、知的財産部では対処しきれない状況となった。また企業合理化によるスタッフ消滅等 で知的財産部の業務内容の質的変化(特許の権利化・他社との係争処理・契約等本来の業務への集中化)によって、特許情報の活用に関しては、それぞれの現場 で対処する方向になってきた。もともとベンチャー企業にあっては、自分たちで情報収集から解析までやらねばならない。
パソコンとマップ作成ソフトがあれば、誰でもマップが作れるという錯覚は今すぐ拭い去るべきである。パソコンとマップ作成ソフトはあくまでもマップ作成(図表作成)のツールであり、情報感性と創造性を発揮する魔法の杖ではない。
●なぜ、特許情報なのか●
特許が出願され、それが公開される事で、産業の発展に寄与する。これが特許制度の目的の一側面である。一つ一つの特許の情報は、将来の技術発展、新製品に必要な情報でもある。
今、企業はかつてない試練の時期にあるということは誰もが認識している。これを突破するためには新規事業の探索、新製品・新技術の創造しかない。そのた めには、常に新しい特許情報を収集し、経営・研究・開発・営業活動に生かさなければならない。
情報の中には諸々のものがあり、それぞれに有用なものが存在するが、技術情報として最も重要な位置付けにあるのが特許情報である。
〔MC法で表しました〕
●パテントマップの考え方●
昔から、情報は自分で探し、分析してそれをもとに新たな情報を創造し、自分の仕事に生かしていた。情報が膨大になっている現代でもその事は変わらない。 幸いここに来て、情報を個人で入手する強力な手段が発達し、誰でもどこでも全世界の情報が入手できる環境にある。
特許情報も例外ではなく、容易に安価に誰でも入手できるのである。しかし入手した情報を整理・加工してさらに解析して研究開発に活用するにはもう一つ壁があるようである。
特許情報を加工して、わかりやすくチャートや図表にまとめたものを、パテントマップと呼んでいるが、これが研究開発テーマの探索や新しいアイディア、更には発明に有用と言われている。そのため、パテントマップ作成が目的となって特許情報の世界で持てはやされいる。
しかし有用なパテントマップを作成するには、感性と経験が必要といわれている。即ちパテントマップが、情報の創造的成果であると言われる所以であり、その過程が重要である。
実際にパテントマップを作成してみた方はお分かりと思うが、かなりの時間と労力が必要で、口で言うほど容易ではないのである。特に日々の仕事に追われるベンチャーの社長や、研究開発者にとってパテントマップどころではないかもしれない。